2007年度公募プログラム

宇宙授業の実施とデジタルコンテンツ制作

活動課題(テーマ)

講演形式の定期的な宇宙授業の実施とデジタルコンテンツおよび指導案の作成と配布

担当

女子高等学校 教諭 小林 秀明

小林 秀明ある回の『宇宙授業』であった本当の話です。講演者が感極まって言葉に詰まり涙を流しました。すると聴講者から自然と拍手が沸き上がりました。そして聴講者全員が講演者と握手をして帰りました。

活動内容

本校では2004年度より,定期的に(2006年度からは各学期に1回)講師を招いて『宇宙』をテーマとしたユニークな授業(以下「宇宙授業」)を行っている。
テーマは宇宙であるが,切り口は女子高生が興味を抱いている進学や就職,さらには日常生活からの関連事象を選び,「宇宙授業」に参加した生徒が帰宅後,家族で話し合えるような授業内容となっている。

●「宇宙授業」の骨子

(1)宇宙=理科という固定概念を外すこと。(2)生徒主体で行うこと。(3)女性が主役であること。

(1)について「理科という固定概念を外すこと」とは、児童・生徒・学生にとって宇宙が遠いものという先入観を持ってもらいたくないためで,言い換えれば「宇宙をお茶の間に」と考えている。そのために「宇宙授業」では、法律(第1回目の宇宙授業)、ダンス(第2回目)、働く女性(第3回目)、CM製作(第4回目)、宇宙旅行と連詩(第5回目)、宇宙とファッション(第6回目)というように、理科とは違った側面からのテーマを選んできている。

(2)について、打ち合わせから司会進行、会場の装飾と雰囲気作り、反省会、そして申し送りまでを本校生徒が行うことである。たとえば事前の打ち合わせでは、講演者の会社やオフィスに赴くわけであるが、高校生にとっては初めてのことばかりである。この打ち合わせでは、生徒は講演者だけでなく企業イメージやオフィスの雰囲気(社会)を感じ取り、講演者にとっても当世の女子高校生に直接触れることができ双方とも良い機会となっている。

(3)について、女性が主役ということは、講演者やコーディネーターの中に女性の方が最低一名加わっているということである。女子高生にとっての興味は専門的な知識の他に、その人の人生を知ることにある。その人がどうして現在の職に就いたのか等、やはり女性としての生き様は共鳴するようである。

● 今後の「宇宙授業」の展開

今までの宣伝活動の対象が、主に会場等の関係から女子高生徒と保護者、および緒学校理科教員と共同研究者へのメールでの伝達であった。その結果、女子高生徒と共同研究者の参加者数は増加の傾向にあるが、諸学校の生徒の参加はほとんど見られなかったのが実情である。
そこで、本年度からの展開案として、第一に諸学校理科教員への周知徹底を行なうこと。第二に、諸学校の児童・生徒の多くが聞くことができる時期・時間の設定を試みたいと思っている。これについては一学期の「宇宙授業」から実施を検討したい。

・JAXAデジタルアーカイブスとの連携

これについてはJAXA側(宇宙教育センター長 的川泰宣氏、JAXA有人宇宙環境利用プログラム推進室参事 福田義也氏)からの協力も得られており、最新の映像が手に入れられるという特徴から、現在もグループで作成中の教材にも採用中である。

・NHK教育用映像の配信実証実験プロジェクト「オアシス」との連携

これはNHKの学校向け番組とビデオクリップを教育現場(主に小中学校)での授業用に3年間無料で提供するプロジェクトであり、筆者も講師を務める高校講座「理科総合B」の番組担当ディレクターからもその経緯を聞いており、映像の解像度が非常に高く教材に適した映像が豊富であることから、メンバーに入って教材化を模索していきたい。

・科学技術振興機構(JST)理科ネットワークにある教材との連携

JSTの理科ネットワークとしては、今年度、デジタルコンテンツの普及と利用拡大を目的に「理科学習用副読本(プロジェクト版 筆者は生物分野を担当)」を作成した。今後は完成版を全国の小中高に配布予定であることから、今後、デジタルコンテンツ利用の頻度が一層高まると思われる。さらに、宇宙教育に利用できるコンテンツも非常に多く、今年度公開されたデジタル教材No.90「シミュレーションで見る最先端バイオテクノロジーの世界(筆者監修)」にある『宇宙からDNAへ』というコンテンツなどは,すでに本校の『宇宙授業』の冒頭でも利用している。

活動における効果

● 本校生徒への効果と期待

昨年度、3回行われた「宇宙授業」への生徒の平均参加者数は90名であった。本校の生徒総数が600名弱であるので、単純に生徒一人が3年間に最低1回は「宇宙授業」に参加していることになる。また、30名ほどの生徒は毎回参加している生徒で、下級生の中には将来企画から参加したいという生徒も多い。さらに、終了後のアンケートや講師への手紙を読んでいても、普段、得ることができない経験をしたことへの感謝の気持ちが述べられている。進路や将来について、何らかのヒントを得ているものと確信している。

● 塾生への効果と期待

今年度の「宇宙授業」では、慶應女子高の生徒だけでなく、広く諸学校の教員・児童・生徒への宣伝を行う。実施には、さまざまな制約があるが、夏季・冬季・春季の休業中や行事などが行われていない土曜日の午後や日曜日に設定できるか模索してみる。本校の「宇宙授業」は、大部分が体験型であり学年に偏りがなく小学生でも参加が可能である。将来的には、会場を各諸学校に順に移しながら、その学校の特色を生かした授業を試みてみたい。
本校は向井千秋氏の母校でもあり、慶應義塾からは他にも星出彰彦氏も宇宙飛行士としてシャトルへの搭乗が決定している。この「宇宙授業」をきっかけに向井氏や星出氏に続く宇宙飛行士を諸学校の児童・生徒から輩出できる日を期待したい。

● 宇宙教育への効果と期待

「宇宙授業」で得られたノウハウは一般に公開し、講演者の了解も得たうえで資料(DVDや授業案など)も無償で提供している。さらに宇宙航空研究開発機構(JAXA=旧NASDA)の教育分野への関心が低いといわざるを得ない状況の中で、本校「宇宙授業」では常にJAXAとの連携を保ちながら宇宙教育の重要性をアピールし続けている。その効果であろうか、本校の「宇宙授業」がユニークなテーマ選定や多様な講師を招きながら継続していること、リピーターも多いという特徴からJAXA側も感心を寄せているところである。
なお、本校が作成中のデジタル映像教材については、(株)新潮社 メディア部 岡田雅之氏からも製作・編集の技術的なアドヴァイスを受けており,将来的に完成度を高めた映像コンテンツの頒布も期待できる。

● 社会への効果と期待

現在,女子高等学校のホームページ(HP)上で毎回の「宇宙授業」は更新中であり,さらにメンバーの中の専門家によりHPを別に立ち上げる準備が進んでいる。すでに女子高HPを見たという受験希望中学生からの問い合わせや様々なメディアからの取材依頼が見られる(取捨選択している)。今後は、デジタルコンテンツの配信・ライブラリーの放映・ネット中継(第2回宇宙授業で試行済み 協力:東京電力TEPCO)など、社会への発信も試みていく。これによりネット上で検索される機会も増え、宇宙教育さらには慶應義塾への関心が高まるものと期待される。

未来先導基金の取り組みにご賛同していただける方はこちらをご覧ください。

ご賛同いただける方はこちら

ページの先頭に戻る