2007年度公募プログラム

「慶應義塾への導入プログラム」—正課外教育を中心に—

活動課題(テーマ)

慶應義塾における「導入教育」は、どのようなものであるべきか、本プログラムはこの問題にパイロット的なアプローチを試みる。
これまでも塾内では、様々な個別的な導入プログラムが実施されてきた。例えば、SFCでは山内慶太教授をコーディネーターに福澤思想や慶應義塾の歴史を学ぶ入門講座が実施されている。また日吉の教養研究センターでは岩波泰子先生を中心に正課の導入プログラムの実施に向けた取り組みが進んでいる。これ以外にも日吉の学生相談室は学部の科目履修ガイダンスの際に、相談室の役割を説明するなど、正課外の導入教育も行われている。 こうした先行プログラムを継承しつつ、学生総合センターは現在の学生ニーズを敏感に嗅ぎとり正課外の分野において新しい導入プログラムを作り出してゆきたい。その際、コアとなる概念は次の二つである。

<塾生としてのアイデンティティの獲得>

慶應義塾に入学しながらも慶應義塾が持っている伝統や他大学とどう違うのかを意識している学生は少ない。他の大学にはない義塾独特の気風と塾生生活とのかかわりについて考える場を設け、塾生らしい豊かな学園生活を送るためのきっかけを提供したい。

<学園生活への導入>

学問への導入教育はなされても、学園生活への導入は二の次とされてきた多くの大学で、いま初年次教育の必要性が叫ばれている。塾生の自立に多くを要さなかった義塾においても「個」としての支援が必要な塾生が見られる。自分らしさを認識し良き仲間と塾生生活を謳歌するためのきっかけ作りやアドバイスを投げかける場が必要である。また、学部・学年を超えた塾生同士また教職員との交流によって豊かな人間性が醸成され、「社中」の同志意識の基礎的精神が養われることが期待される。
導入教育という性格上、実施時期は学部新入生の授業開始前後が妥当と考えられる。ただし本年度は以下の二つのプログラムをパイロット的に春学期、夏休み、秋学期を通して順次具体化してゆきたい。

担当

学生総合センター長 富田 広士

本プログラムが、塾生諸君が「慶應義塾らしさ」とは何かを実感し、またキャンパス生活における自分のあり方を見つめ直し自己実現に取り組んでゆくきっかけとなることを願っています。

実施状況

(1)連続プログラム「慶應義塾を知ろう~塾生生活をエンジョイするために~」詳細>>

1.講演会「慶應義塾の『空気』-国立大学にはないもの-」 詳細>>

実施日:4月25日(水)
講師:山内慶太(看護医療学部教授)

2.「慶早戦前夜祭~伝統の一戦」 詳細>>

実施日:5月25日(金) 
出演者:前島信野球部部長、相場勤野球部監督、野球部ナイン、應援指導部
内容:慶早戦の歴史レクチャー、リーグ戦振り返りビデオ上映、野球部監督・主将挨拶、野球部ナインへの質問コーナー、應援指導部による応援指導およびステージ、若き血斉唱

3.講演会「キャリアプランに望まれる自信力」 詳細>>

実施日:10月31日(水) 
講師:河地和子(経済学部教授)

4.講演会「キャンパスでの居場所づくり~生活実態調査と学生の目からみた塾生の現状と要望~」
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実施日:11月5日(月) 
講師:森吉直子(商学部准教授)

5.公開座談会「日吉から翔びたつために~カウンセラーからのメッセージ特別編~」 詳細>>

実施日:11月8日(木)  出演者:増田直衛(学生相談室長)、讃岐真佐子・平野学・菊住彰・西河正行(学生相談室カウンセラー)

(2)合宿企画「塾生交流キャンプin立科」 詳細>>

実施日:9月12日(水)~14日(金)
場所:慶應義塾立科山荘(長野県)
参加者:学生49名 教職員7名 合計56名
内容:レクチャー「慶應義塾を知ろう」、グループディスカッション、懇親パーティー、交流企画(自然散策・ソフトボール・屋内レクリエーション)、バーベキュー

成果・目標達成度

本プログラムのコアとなる概念は以下の二つである。

(1)塾生としてのアイデンティティの獲得

他の大学にはない義塾独特の気風と塾生生活とのかかわりについて考える場を設ける

(2)学園生活への導入

目的意識がない、大学生活になじめないといった学生に自立した学生生活を送るきっかけを与える、また上記二つの概念に関連して、塾生同士または教職員との交流によって豊かな人間性を醸成し、「社中」の同士意識の基礎的精神を養うことも狙いとしている。

講演会「慶應義塾の『空気』」、「慶早戦前夜祭」では、まさに塾生にとって義塾への帰属意識の支柱となるテーマをとりあげ、参加者は義塾が持つ伝統への理解をさらに深めたようである。一方、講演会「キャリアプランに望まれる自信力」、講演会「キャンパスでの居場所作り」、公開座談会「日吉から翔びたつために」は、学園生活に悩みを抱えている学生に対して、自立し目標をもったキャンパスライフを送るためのアドバイスを投げかけることも狙いとした。実施後のアンケートによると、各企画とも好評で多くの学生にとって新たな一歩を踏み出すきっかけ作りとなったようである。しかし、大学生活に失望感を抱いている学生、挫折経験から自分を模索している学生、自分に自信がもてず積極的に行動できない学生、他人の価値判断基準に圧倒され、劣等感を抱いたり自分らしさを獲得できず悩んでいる学生などが少なくないことも、参加者の発言やアンケートによって浮き彫りにされた。これらの連続企画はいずれも参加者が少なかったのが残念である。ただし小規模な点を活かして参加者同士交流しながらアットホームな雰囲気で行われ、講演会参加者の満足度は高かったようである。

「塾生交流キャンプin立科」では学部・学年を超えて塾生同士が活発に交流し、参加した学生の感想は大変好評であった。特に参加費5,000円というコストパフォーマンスが魅力的だったようである。価値観の違う塾生や教員と語り合い多くの友人を得たことで、社中のつながりの素晴らしさを実感し義塾へ帰属意識も高まったのではないかと思う。またこの合宿を通して、多くの学生が望んでいることで普段教職員があまり認識していない点-新しい友人を作る場が少なく自分の人間関係の輪を広げる機会を欲していること、教員と自由に話をする場を求めていること-をうかがい知ることもできた。

今後の展望

今後も「塾生であるという自覚」、「学生生活における目的意識」をいかに学生に抱いてもらえるかを念頭に置きながら、個々のプログラムを実施してゆく。また、突出した「先導的な学生」を支援すると同時に、普段教職員から意識されることのない学生層-目標がなく自分の能力を発揮することがないまま漫然と大学生活を過ごしている学生-にも目を向けていたい。他人を見て自分を評価するのではなく、しっかりと自分で自分自身のことを考える、また多くの人と交流し社中のつながりの大切さを実感する、そのようなきっかけづくりを正課外教育においていかに行うことができるのか、引き続き模索してゆきたい。

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