2007年度公募プログラム

SFC海外フィールドワーク助成制度

活動課題(テーマ)

海外での一定期間のフィールドワークを通して世界に貢献しうる思考力と行動力を併せ持った有為な人材の養成を目的とした学生プログラムを積極的に推奨し経済的な支援を行う。

担当

総合政策学部教授 小島 朋之

小島 朋之SFCの学生はみな「未来からの留学生」です。「問題発見」と「問題解決」の試みを通じて、「人間交際」に「益をなさんとする志」を持ち、「志」は国内だけでなく、海外でも「問題」現場でのフィールドワークを通じて先導する「未来」の構築に取り組んできました。この「海外フィールドワーク助成」は、こうした「志」を抱くSFC学生の皆さんを支援します。

実施状況

夏季・冬季・春季の長期休暇中のフィールドワークを行う学部生に研究助成を支給している。 今年度はアメリカ、イギリスを始め、カメルーン、イスラエル、エチオピアなど、10カ国に15名の学生を派遣した。

当助成制度では長期休暇前に公募・選考を行う。学生に「海外フィールドワーク計画書」を自身の指導教員の指導の下作成し、提出させる。それを元に当助成制度運営委員会のメンバーが選考し、採用者を決定する。 採用された塾生はフィールドワークを行い、帰国後に報告会での報告および報告書の提出を行う。報告会では採用された学生が一同に会し、報告を行う。報告会の中で運営委員、参加学生からの質疑の時間を設け、ここで得られた指摘を踏まえ、報告書を作成する。報告書は卒論レベル程度を要求し、必ず指導教員の指導を受けてから提出する。提出された報告書は論文集にまとめ、プログラム報告会にて参加者に配布する。
以下に本年度で採用されたテーマを一部挙げる。

「ITを活用した新たな農業システムを構築する-生産から消費まで-」

研究会では農業とITとの連携で高品質高収量体制の確立を進めており、新潟県糸魚川市に実験農場を設け、トマト栽培を進めている。このモデルとなったイスラエルが行っているITを用いた栽培システムを視察し、現地のエンジニアにヒアリングを行うことで、失敗のない安定的な生産管理システムの開発の課題やヒントを得る。

「タイ国家に生きる少数山岳民族-彼らに必要な要素とは-」

タイ北部の山岳少数民族のカレン族に焦点を当て、タイ国内山岳民族が生活するにおいて、彼らの選択肢をどう捉えて、その選択肢を広げていくのかを調査する。

「カメルーンのクロス・リヴァー地方における仮面儀礼の宗教学的考察」

バクウェリ民族により行なわれる仮面儀礼(エレファント・ダンス)の様相、世界観、宗教的意味、役割、人々にとっての位置づけを調査し、現代における仮面儀礼の意味を探る。

「アフリカ遺産都市における居住環境調査-エチオピア・ハラール旧市街を対象として-」

中心都市・居住地・遺産という性格を併せ持つ複雑な都市であるハラール市の居住環境の実態に着目し、その住民の遺産に対する意識・都市化の実態を調査し、都市発展における住民相互のコミュニケーションなどを明らかにする。

「未来先導基金2007年度プログラム報告会」の資料より抜粋

成果・目標達成度

初年度ということもあり学生への周知に苦労したが、結果的には優秀な応募が相次いだ。残念ながら採用を見送らねばならないケースもあり、助成を受けずにフィールドワークを行うケースも多数存在した。熱意ある塾生の期待に応えられない部分があり大変残念ではあるが、当助成採用学生の研究水準が、研究を行う学生の先導となることを期待する。 当助成制度の目標の一つに、SFCの特徴であるフィールドワークを奨励し、研究成果向上を図ることがあげられる。当助成によって、より充実したフィールドワークを実施することができ、研究水準の向上に貢献できた。また、注目したいのは最終学年以外での採用者である。SFCでは希望者は研究会に1年次から参加できるため、低学年時から研究を進めている塾生も存在する。彼らにより高度な研究のチャンスを与えると同時に、最終学年の塾生と同じ場で報告、質疑に参加させることで、他キャンパスにはない刺激的な学びの環境を提供できたのではないかと考えられる。

フィールドワークを行った学生からは、以下のような声があがった。

  • ・助成制度の経済的援助のお陰で実施が難しいと考えられていたフィールドワークを行うことができた。 今回はカメルーン、エチオピアなど、渡航や現地滞在費がかなりの負担とあるケースがあり、助成制度なしには実施が難しいケースがあった。
  • ・報告会では異なる分野の研究を行っている塾生が集まり、質疑に参加する。これにより自身の所属する研究会等では扱わない分野に触れることができ、お互いの刺激となった。

目標達成に関して。目標の一つにフィールドワークの推進を通じて研究成果向上を図ることがある。フィールドワークを活かし卒業制作の完成度を高めた者や、低学年ながら刺激的なフィールドワークおよび報告を行った者もおり、ある程度達成できている。しかし、フィールドワーク内容は評価できるが報告が物足りないケースや、報告書への落としこみが拙いケースも存在した。
ただ派遣させるのが当助成の目標ではない。充実したフィールドワークを研究活動の向上に繋げ、先導者としての資質を磨くことまでを当助成は目標としている。そういった意味で、目標達成には改善点が多く残されていると言える。

今後の展望

今後の展望として、当助成制度への応募者増大と、効果的なフィールドワーク実現のためのフィールドワーク教育の実施をあげる。
研究成果向上という点においては当助成の効果を実感できた。しかし未達成事項として、効果的なフィールドワークへの指導があげられる。採用者の中には事前準備(アポイントメントの取り方、計画の立て方等)や事後対応(報告、報告書作成等)が不十分と感じられる者も存在した。よって次年度から以下の2点に一層の力を入れる。

  • (1)フィールドワークガイドを作成し、フィールドワーク指導を行う
  • (2)教員との連携を強化し、フィールドワーク前後の指導教員からの指導を充実させる

今後は教員との連携を強化し、指導教員と共にフィールドワーク前後の指導に力を入れる。また、優秀な学生を当助成制度に推薦して頂き、優秀な学生に切磋琢磨させ、SFCの研究活動に刺激を与えていきたい。

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