2007年度公募プログラム

日中韓遠隔授業 ピルグリム・ワークショップ/国際ワークショップ

活動課題(テーマ)

  • 慶應義塾大学SFC(日本)・復旦大学(中国)・延世大学(韓国)の三大学遠隔授業実施
  • 三大学の大学院生によるピルグリム・ワークショップおよび国際ワークショップ開催
  • 東アジアの政治・安全保障協力/貿易・金融協力/文化・社会協力に関する三大学共同タスクフォースの形成と院生による研究報告と政策提言

担当

総合政策学部専任講師 神保 謙

実施状況

慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)は2001年度より延世大学(韓国)および復旦大学(中国)ともに、インターネット接続によって互いの教室をモニターでつなぎ、英語による共同の遠隔授業を実施してきた。本授業は、デジタル・ラーニングの一環として大学院科目「グローバル・ガバナンスの視点」(春学期)「グローバリゼーションと地域変容」「地域戦略研究(東アジア)」(秋学期)のオンラインでの合同授業を推進するとともに、三大学の受講学生同士が実際に集い、共同研究を通じたコラボレーションを促進することを目指している。

本授業を受講する学生は、春・秋学期に三大学が持ちまわりで開催するピルグリム・ワークショップ(5月・11月開催)にて研究グループを組織、研究テーマ・手法を準備し、その最終成果を国際ワークショップ(12月開催)にて発表した。研究テーマとしては「東アジア・北東アジア」を土台とする政治・安全保障、貿易・金融・IT、文化・社会など、複数のタスクフォースが形成される。各タスクフォースは、ピルグリム・ワークショップにて問題意識を共有したうえで、オンライン上の共同研究を実施し、その成果を政策提言として国際ワークショップで発表した。

2007年度春学期は「グローバル・ガバナンスの視点」(遠隔授業、渡邊頼純教授担当)を履修する大学院生が復旦大学における「ピルグリム・ワークショップ」に参加した。同ワークショップは5月12日に開催され、日中韓より53名(日本からは17名の参加)大学院生が集った。尚、春学期に関しては学術交流基金より渡航費補助の部分的支援を受け、その不足部分を未来先導基金より充当した。

2007年度秋学期は「グローバリゼーションと地域変容」(渡辺吉鎔教授担当)および「地域戦略研究」(神保謙准教授担当)の「ピルグリム・ワークショップ/Global Governance Workshop」には、本プログラムが発足以来最高の75名が、共同研究に参加した。「ピルグリム・ワークショップ」は2007年11月18日に韓国・延世大学で開催され、その様子はウェブサイト(http://dislecture.nuts-choco.com/workshop.html)にて報告されている。また「Global Governance Workshop」は、同年12月15日に慶應義塾大学三田キャンパスで開催され、会議アジェンダ・討議内容については活動報告書に取りまとめた。

尚、12月のワークショップ開催の機会を得て、(1)日中韓遠隔授業担当教員による打ち合わせ会合、及び(2)博士課程在籍院生による研究報告・討論会を合わせて開催した。

成果・目標達成度

【成果1】

日中韓遠隔授業及びピルグリム・ワークショップ・合同シンポジウムは、2002年度よりSFCの国際連携のフラッグシッププロジェクトとして位置付けられている。しかし、これまではワークショップに参加するための費用等の問題があり、三大学の履修生全体のセメスターを通じての参加を得ることが困難であった。とりわけ、復旦大学院生の海外渡航・滞在費は、同国の経済状況に勘案して大きくなり、三大学間のイコール・フッティングによる共同研究の実施が困難となる問題が生じていた。しかし、2007年度は未来先導基金からの支援を得ることにより、これまでの他の独自資金・他の外部資金よる補助では十分に参加できなかった、韓国・中国(特に中国人学生)への支援が行き届き、過去最大の参加人数(75名)を確保することが可能となった。結果として三大学による密度の高い政策志向型の共同研究を推進することができた。

【成果2】

未来先導基金による事務経費(アルバイト人件費・資料代)の補助により、事務統括・渡航手続き・査証(ビザ)関連手続き・ウェブサイト構築・会計などの業務が著しく改善した。とりわけ、これまで渡航手続きや査証(ビザ)手続きによって、渡航が中止になった過去の事例と比較すると、今回は事務体制が整えられたことにより、問題なく手続きを済ませることが可能となった。また、ウェブサイト(http://dislecture.nuts-choco.com/)の構築によって、遠隔授業を履修する院生同士の情報共有・情報交換がスムーズになされ、共同研究の推進に役立てることができた。

【成果3】

12月の合同シンポジウムでは、慶應義塾大学(神保・渡辺・渡邉)、延世大学(Ko Sangtsu, Park Young-Ryol, Park Myunglim)、復旦大学(Guo Dingping, Shen Yi)の各教員が集まったことにより、(1)今後の三大学遠隔授業・ダブルディグリー制度のありかたについて討議する事務局ミーティング、(2) 博士課程在籍院生3名:山影統(政策・メディア研究科)・Pavel Norin(政策・メディア研究科)・Lou Wansuo(復旦大学国際関係公共大学院)の研究報告・討論会を実施した。

今後の展望

アジアにおける大学の国際連携を推進するなかで、慶應義塾大学・延世大学・復旦大学の遠隔授業および関連ワークショップ・シンポジウムの実施は、デジタル・ラーニングとface-to-faceの共同研究を組み合わせた、ユニークな意義が認められる。他方で、face-to-faceの共同研究には当然ながら渡航・滞在に関する費用負担が必要となり、これを毎年のファンドレイジングで担保することには困難が伴う。

今後の方向性としては、できるかぎり安定的な基盤のある財政補助が受けら入れられることが望ましいと考えている。また、こうした交流の拡大を通じて、三大学のダブル・ディグリー制度の運用改善や、共通の教材・教育プロジェクトなどのコンテンツ作りにも発展させることが望ましいと考えている。

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