2007年度公募プログラム

見る、会う、語る アジアの友だちプログラム
-未来のグローバル・リーダーを育てるアジア交流プログラム-

活動課題(テーマ)

義塾の有するICT環境を利活用し、リアルタイムでアジア(フィリピン・タイ)の大学の中等教育段階(前期)の学校と塾内一貫校をインターネットで結びTV会議システムによって授業・課外活動を通して交流活動を実施する。また、冬休み等の休業期間を利用し、相手国と相手校を訪問してTV会議で知り合った友人と過ごし、リアルワールドでの経験を共有する。
本活動によって、わが国とアジアの国々との過去の歴史、地理的な隔絶を越えたグローバルな視点に立った「未来へのグローバルマインド」を持つ学生を育成することを目指す。

担当

普通部教諭 太田 弘

太田 弘このプロジェクトは、将来、世界で活躍する若い塾生が同世代のアジア(フィリピン、タイ)友だちと自然環境や文化、歴史の話題で交流しようといプログラムです。 授業や課外活動で、塾内のインターネット環境を活用したTV会議システムを使う交流が中心ですが、現地の相互訪問なども想定に入れています。

実施状況

本プロジェクトでは、義塾のICT環境を利活用し、リアルタイムでアジア(フィリピン・タイ)の大学の中等教育段階の学校と塾内一貫校をインターネットで結び、TV会議システムによって授業・課外活動を通して交流活動を実施した。また、春休み等の休業期間を利用し、交流相手校であるタイ国を訪問し、TV会議で知り合った友人と過ごし、相手国で有意義な交流経験を共有した。
6月に始動した本プロジェクトは、TV会議システムとして、V-Cube社の「Nice to meet you」を利用し、通常のWeb回線を利用した遠隔授業を試みた。8月に現在の交流相手校である(1)フィリピン側:シリマン大学(Silliman University SCHOOL OF BASIC EDUCATION)と(2)タイ側:プリンセスチュラボーンズ大学(PCC:Princess Chulabhorn's College、以下PCC)をメンバーの太田、山崎、内田で訪問し、本プロジェクトの趣旨説明と協力の依頼、IT環境の確認を行った。シリマン大学のインターネットは回線が細く、切断されることが多く、かなりの困難があった。

一方、タイのPCCは、PCルームも整備され、実施可能が確認された。9月から12月まで、数度にわたり、回相互に線を繋いで、普通部の複数の部会「地理研究会」「英語研究会」で遠隔会議を実施し、様々な生活に関する情報交流を行った。
Web交流に続き、冬休みを利用した義塾の学生の訪問は当初、フィリピンを前提に準備したが、国情の不安定、インターネット回線の状況の問題もあり、訪問を断念。春休みにタイ訪問に変更し、準備に入った。PCCとの交渉、旅程の確認・手配をタイ在住の水谷メンバーに依頼し、学年末の3月に訪問実施を決定、実施した。

訪問交流には、普通部から8名(中学3年7名、中学2年1名)が参加し、SFC大学院生(普通部OB)がコーチとして同行。4泊5日(3月20~24日)のタイのバンコクとPCCのあるナコンシマラートを訪問。現地で大歓迎を受け、地域の歴史・文化・地理を広く見聞し、学校の施設見学(寄宿舎、校舎)、合宿形式による交流会(夕食会)、さらに地域の小学校訪問、農村開発の状況視察などの農村訪問をPCC生徒と共に行った。バンコクでは、PCCの教員・生徒と共に、バンコク近郊の農村を訪問し、水上生活の体験、ココ椰子のプランテーション見学、仏教寺院の訪問などの時間を過ごした。
本交流によって、参加者一同、わが国とアジアの国々との過去の歴史、地理的な隔絶を越えた「地球市民」としての立場に立った「未来へのグローバルマインド」を持つ共有意識を持つことができた。PCCからは、学校間の交流の継続・日本訪問の意向が伝えられ、今後の交流の継続の必要性の思いを強く感じた。

成果・目標達成度

本プロジェクトは、本塾の一貫校とアジアの同じ教育段階の学校同士をインターネットのテレビ会議システムで結び、学生同士の会話を引き出し、ICT技術を利用した教育実証実験事例として教育上の「先導」することにあった。リアルタイムで生徒同士が繋がって生まれる若い世代の感動と共感を、同じ人間としてのレベルで知りあうところに本プロジェクトの目標があった。 まず、本プロジェクトの切り口であるWebを使ったTV会議システムを用いた生徒同士の会話は、顔を見ながら、英語を介しての会話であるため、国による文化的の違いから困難があった。相手国のフィリピンとタイとは、日常使用する言語環境に異なるものはあった。日本の生徒から見ると、日常語として英語を使っているフィリピン、日本と同じように非日常的に英語を使うタイとは、多少、事情は異なる。この世代の生徒は、心から気持ちを開くまでには多少時間がかかる。しかし、一旦、打ち解けると言語を越えた深い繋がりが生まれる。インターネットで相手を認識し、深い会話が成り立つまでは、多少の苦労はあったが、実際に訪問することにより、五感を使って相手に会い、同じ時間をと共に過ごすことによってその共感への段階は急速に高まった。やはり相互理解も「百聞は一見に如かず」である。

近年、海外旅行は私たちにとって大変身近なものになった。家族でアジアのリゾートにも簡単に出掛けられる時代になったが、どれほどの日本の中高生が自分と同じ年頃のアジアの中高生と語っているであろうか?今回のプロジェクトでは、学校が授業の仲立ちをし、アジアの友だちとの出会いの機会を設けることによって受ける感動を、教育機関、学校がその役割を果せることを実感した。

今回、家庭や学校にあるPCが世界中の友だちと繋がるツールになる。さらに相互に交流することによって実際に会い、語り合うことによって日々日常の生活を見直すことができる。まだ、日常の日本の都市生活では忘れていた「素直な心」、「温かい思いやり」を感じると同時に、同じ歳でも、ひとりひとりがしっかりとした目的意識、将来の夢を持っていたことに交流に参加した生徒が大いに驚いた。
アジアの子供にとっても日本製、日本人という「日本」に対するイメージを具体的な人を通して見ることができるようになったに違いない。こうした経験を経て、これからも生徒同士の絆が永く続くならば、アジアにおける国を越えた未来の「グローバル・リーダー」としての資質をもつ塾生を育てたことになるだろう。

今後の展望

今回の交流プログラムではWebでの交流-訪問-Webでの交流という一連の流れが実施できたが、フィリピン訪問はWeb環境の不備、交流国に対する不安もあって実現しなかった。さらなる経験・実績の積み重ねが必要になろう。 また、タイとの交流では、現地の多くの方々、現地校の受け入れ態勢が充実し順調に進んだ。今後は相手校からの「相互交流」ができれば望ましい。本年6月、タイ側からの訪問を希望する提案も出てきている。今、インドネシアとの交流などの提案もある。

今後、普通部から中等部、さらに湘南藤沢など、塾内の一貫教育校への参加拡大を図るなど、ぜひとも訪問交流をより充実して継続したいが、多少の安全経費の補填が必要であることも今回の交流経験から得られた点である。

未来先導基金の取り組みにご賛同していただける方はこちらをご覧ください。

ご賛同いただける方はこちら

ページの先頭に戻る