2008年度公募プログラム

「三田の家」:21世紀的学生街の創出に向けて

活動課題(テーマ)

大学を地域・社会に開く拠点=「三田の家」を、教員と学生が共同運営することにより、昨今の塾生に欠けがちな社交力(sociability)の育成を目指す。
学生/教員/職員、大学人/地域住民・商店主、日本人学生/外国人留学生、幼稚舎生/大学生、一般学部生/通信教育部生、「健常者」/「障害者」など、異文化・異世代・異組織・異領域間の横断的交流を促す多様なプロジェクトを展開する。
三田商店街と協働することにより、三田の地域特性を生かした新たな文化・学生街の創出を目指す。

担当

経済学部准教授 長田 進

長田 進現代は大学と地域の関係について問われる時代です。私たちの三田の家プロジェクトでは、大学と地域の関係を単なる「地域貢献」にとどめずに、ともに「地域を創る仲間」として活動することを目指します。

活動内容

慶應義塾は、歴史的に地域社会に対し多大なる貢献を行なってきた。が、近年、特に三田キャンパスに関しては、地域社会との関係が希薄になりつつあり、残念ながら三田特有な文化あるいは学生街が失われつつあるように思われる。
そこで、我々は、昨年の秋から、三田商店街振興組合と連携しつつ、共同で「三田の家」を運営し、ささやかな形ではあるが、地域社会に新たな文化・交流の萌芽をもたらすべく活動してきた。その活動を、さらに長期的に発展させ、21世紀の大学にふさわしい地域社会との関係性=学生街の創出に向けて、多様な文化的・教育的プロジェクトを展開していきたい。

「三田の家」は、下記活動メンバー=教員が各々各曜日を担当する「マスター制」により運営されている。従って、「三田の家」は、原則的に、毎日オープンし、活動を行なっている。基本的に、それは、来訪者なら誰でも歓待するいたって「開かれた」場であり、交流スペースである。各日のスケジュールは、「三田の家」のインターネット・サイト(http://mita.inter-c.org/)に掲載され、毎月更新されている。
そのような通常の活動のほかに、来年度に関しては特に以下の企画を重点的に行なっていきたい。

(1) 三田地域・商店街活性化プログラム(街頭テレビ、CM製作、商店街イベントへの協力など)

2008年4月から2009年3月にかけて、三田商店街振興組合事務所(東門向かい側)のショーウインドーに設置されているテレビスクリーンを用いて、教員・学生が制作した各商店のCMやその他の番組を放映する予定。 また、商店街の企画する「三田納涼カーニバル」(7月)「X'masビックプレゼント」(12月)「音楽の夕べ」(11月、慶應義塾マンドリンクラブとの共催)などに協力する。

(2) インターネット放送局の運営

2008年度上半期に、放送局を開局予定。開局後、常時、活動メンバー=教員による公開授業・ワークショップ、学生たちによる自主企画番組、三田地域の文化・歴史を紹介する番組、商店街を振興する番組などを、自主制作していく。

(3) 外国人留学生との「小さな国際交流」プログラム

主に日本語・日本文化教育センター教員の手塚が、担当の毎週月曜日に、三田キャンパスに通う外国人留学生たちを招き、自国の文化や歴史を日本人学生等に紹介するワークショップを企画する。

(4) (通常の教室では行ないにくい)実験的ワークショップ、公開授業の実施

主に岡原、熊倉、坂倉が、「三田の家」にて実験的な公開授業・ワークショップを毎週木曜日・金曜日に行なう。

(5) オーガニックな食育プログラム(慶應スローフードクラブと共同)

毎週日曜日に、公認団体「慶應スローフードクラブ」有志が、21世紀的食に注目し、各種企画を行なう。

活動における効果

前述したように、物理的には近傍にいるがほとんど出会う機会のない異質な他者たち(留学生、商店主など)と横断的に交流することにより、昨今の塾生たちに欠けがちな社交力を育成する。また、地域社会と共同して、三田という地域ならではの文化・コミュニティ=学生街を作り出していくことにより、未来の塾生の生活にも長期的に貢献することができよう。
具体的には、常時、「三田の家」運営スタッフとして、約10人程度の大学生が活動する。その他に、上記の公開授業・ワークショップ、「小さい国際交流」企画などに、約100名の大学生・OBOGが参加する。さらに、各種学生団体(慶應スローフードクラブ、慶應義塾マンドリンクラブ、三田祭実行委員会、慶應義塾幼稚舎サウンドエデュケーションプロジェクトなど)の有志が各種企画に参加する。

参加者の声

公募プログラム

文学部仏文学専攻 籾山奈々子

大学のキャンパスに通っているだけでは出会うことのできない、商店街や近隣にお住まいの方々、また他学部の学生や先生方と街を活性化する企画をしたり、ワークショップに参加したりすることは、アカデミックなことだけからは学べない多くの刺激を受けることを期待して、プログラムに参加しました。結果、わたしが予想していた以上に多くの「学び」がそこにはありました。ワークショップでデザインなどの実際のスキルを学んだことはもちろん、さまざまな年代の人と交流することで、コミュニケーションのあり方を学んだり、三田や慶應の歴史の一端に触れたり、先生たちの教育に対する思いを学んだりと、学内ではなかなか得ることのできない経験をすることができたと思います。わたしは就職して社会人になりましたが、研究者にならないわたしのような人間にとって、大学でアカデミックなことだけでなく、また資格のような点数で計るようなものではなく、「三田の家」であったような、人と人との関係を構築する場で適したふるまいをするという無形のスキルと経験は、会社に入ってもどんな場所にいても、ずっと支えになると思います。


法学部政治学科 渡辺久美

それまでの大学生活では出会わなかったような人たちと接することができそうなところに魅力を感じ、参加するようになりました。
気の合う仲間と過ごすことに比べて、文化的な他者と関わっていくということは面倒くさいことも多いです。しかし、多様な職業、生き方を選択している方々と知り合えたことで、それまで当たり前に感じていたこと、当たり前と思い込もうとしていたことから解放され、ありのままの自分でいられるようになったような気がします。
また、まちの人と挨拶を交わすようになったり、自分が制作に携わったポスターを店頭で見かけたりすると、三田のまちに自分が関係していることを感じます。
通学路として通り過ぎていた頃には、チェーン店ばかりが建ち並ぶ面白味のないまちに見えていた三田ですが、まちの人の顔が見え、生活の営みが感じられるようになり、このまちがもっと魅力的になる活動をこれからも続けていきたいと思うようになりました。

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