2008年度公募プログラム

チームケアを目指したインタープロフェッショナル教育プログラム
-医・看護医療・薬 学生合同ワークショップ-

活動課題(テーマ)

昨今ますます必要度を増しているチームケアをさらに推進し、効果を上げるためには、将来、医師・看護師・薬剤師の職につく学生たちが、思考や感情のより柔軟な学生時代から交流し合い、自由に意見を交わす必要がある。 本プログラムでは医・看護・薬の各学部学生が学年を問わず一堂に会し、自由に討論することで人間性や倫理観を養い、あわせて互いの領域がチームケアで果たす役割についての理解を深めることを目指す。このような医療系多職種間のインタープロフェッショナル教育により、将来学生たちが臨床の現場でチームケアを実践する際に、有効な相互関係を築くことができる。

担当

薬学部教授 増野 匡彦

将来医療へ貢献するために、自分の職種だけでなく、他の医療職の特徴を理解し、お互いに十分なコミュニケーションをとることは非常に重要です。
平成20年度より、医学部、看護医療学部に加えて薬学部が設置されることを活かした、学部横断型のワークショップで自由に討論しませんか?

  • 第1回 医・看護医療・薬 学生合同ワークショップ
    「リスクマネージメント」(6/14~6/15) プログラム>>
    開催報告>>
  • 第2回 医・看護医療・薬 学生合同ワークショップ
    「インフォームド・コンセント」(11/30) プログラム>>

主な活動メンバー

薬学部特任教授 小林静子
薬学部教授 江原吉博
薬学部教授 望月眞弓
薬学部専任講師 石川さと子
医学部教授 天野隆弘
医学部准教授 佐藤 徹
医学部助教 中島理加
看護医療学部准教授 小池智子
看護医療学部准教授 茶園美加

事務担当部門

芝共立キャンパス総務課

実施状況

当初計画通り、医・看護医療・薬 学生合同ワークショップを2 回行った。以下にその内容、参加 者数等を示す。

第1 回ワークショップ

2008 年6 月14 日(土)、15 日(日)に「リスクマネージメント」をテーマに開催した。参加者は医学部、看護医療学部、薬学部で学生66 名、教員29 名であった。
初日はスタッフ紹介、オリエンテーションから始め、KJ 法・ブレインストーミング後に、グループ内学生の交流を深める目的も兼ねてグループワークI「3 学部でコラボできる学習を考えてみよう!」に入った。成果は用紙に書いて提出させた。その後ワークショップのテーマである「リスクマネージメント」と関連したグループワークII「リウマトレックスの過剰投与:問題点の抽出」を行った。討論内容は模造紙にまとめ発表した。この「問題点の抽出」を受けて「問題解決に向けた討論」のグループワークを2 回行い、PC を用いた発表、質疑応答を行った。なお、グループワークは5~6 名の3学部学生混合で行い、2 名の教員がチューターとして付いた。最後にフィードバックレクチャーとして重森 雅嘉先生(財団法人鉄道総合技術研究所 副主任研究員)「医療事故が起こるメカニズムと対策について」と嶋森 好子先生(慶應義塾大学看護医療学部 教授)「薬剤過量投与による医療事故の調査報告について」を聴いた。

第2 回ワークショップ

2008 年11 月30 日(日)に「インフォームド・コンセント」をテーマに開催した。参加者は他大学も含め学生33 名、教員14 名であった。「インフォームド・コンセントとは?」のオリエンテーションから始め、「乳がん患者への治療法の説明」などのシナリオを決めグループワークを行い、その成果をドラマ仕立てなどの形式で発表した。フィードバックレクチャーは今井 聡美(納得して医療を選ぶ会)「患者の自己決定とインフォームド・コンセント」と大平 雅之(慶應義塾大学医学部 医師・弁護士)「インフォームド・コンセント-医療者の立場から」を行った。今回のワークショップには塾生新聞記者も参加し、記事として取り上げられた。なお、第1 回ワークショップのアンケートにもあったが、2 日間では参加できる学生が少ないことがあり、当初計画から変更し1 日で行った。
これらワークショップの企画・準備は3 学部合同準備委員会で行い、委員会は第1 回の2007 年12月18 日から2008 年10 月28 日までに計6 回行った。

成果・目標達成度

医療現場において患者を中心に考えたチームケアを推進し効果を上げるためには、将来、医師・看護師・薬剤師の職につく学生たちが思考や感情のより柔軟な学生時代からスモールグループワークなどで交流し自由に意見を交わす必要がある。本プログラムでは医・看護・薬の各学部学生が一堂に会し、自由に討論することで人間性や倫理観を養い、あわせて互いの領域がチームケアで果たす役割についての理解を深めることを目指した。
スモールグループワークは活発に行われ、学生間の交流は深まり、グループごとに特徴ある成果発表も行われた。低学年の学生が多い中での討論ではあったが、ケーススタディーなどの設定が適切で質の高いグループワーク成果が得られた。また、フィードバックレクチャーも高い評価が得られた。当初の目的が十分に達成されたことは以下に挙げる学生からの自由記述アンケートでもはっきりとわかる。「3 学部で話し合ったので、議論が深まった」「臨床の現場に出る前に医療職としての責任を改めて感じることができて良かった」「他学部が何を学び、何を専門としているかを知ることができた」「症例検討ができ、本当に患者さんを見ている感じになり、医療従事者になろうという実感が湧いてきた」。さらに準備委員会の開催も含め、医学部、医療看護学部、薬学部の教員間で医療に関わるインタープロフェッショナル教育を、慶應義塾として推進する必要性が合意出来たことも大きな成果である。

今後の展望

薬学では平成18 年度より教育改革が行われ、全国で新たなカリキュラムが導入された。薬学部(当時共立薬科大学)は他大学に先んじ平成16 年より新カリキュラムに沿った教育を始めており、その際にコミュニケーション・倫理教育をスモールグループで行うことを組み込んでいた。これを発展させて今回の医療系3 学部合同のワークショップとなった。安全で高度な医療を提供するためにチーム医療は必須であり、医療に関わる3 学部が合同で教育を行うことの重要性、必要性が学生、教員双方で認められたことは大きい。今回のプログラムは医療へのイントロダクション的な内容であり、これも継続する必要はあるが、さらに高学年での3 学部合同の病院実習まで発展させていく必要がある。

参加者の声

公募プログラム

看護医療学部 野瀬友望

このWS に参加して一番学んだことは、学部間の問題把握・問題解決の視点の違いを学生の発言や問題の捉え方から学ぶことができたことである。例えば医学生は臨床や治療、薬学生は薬やその副作用から、看護学生は対象の尊厳や生活の質といった観点から問題を把握し、その思考を中心に問題解決に取り組む姿勢が感じられた。そしてこのような価値観の差を活かし、より良い医療につなげて行くためには、各職種や各人がコミュニケーションを工夫する必要性も感じた。これ以外にも様々な学びを得ることができ、普段の大学の授業とは異なる形式で楽しみながら学ぶことができ、良い刺激になった。このWS の価値や参加した意義や必要性を本当に実感できるのは、それぞれが実習や臨床に出た時ではないかと思う。今後も是非継続的にこのWS を開催し、参加者が増加し、学生皆が学べるように発展することを願っている。


看護医療学部 中野香織

私にとって、患者と会話をすることは特別なことではなく、難しいことではないと思っていました。しかし3 学部合同ワークショップで、同じ班でディスカッションを行った薬学部の学生に「患者さんとどのように会話すればいいか分からない。看護の皆さんにぜひ教えてほしい。」と言われ、私は驚いてしまいました。それぞれの専門職種によって得意・不得意とすることが違うということ、そして私たちはそれをお互いに補いあわなければいけないことを初めて知りました。普段の看護医療学部の講義だけでは、このようなことを知ることはできなかったと思います。3 学部合同ワークショップに参加して、医学部・薬学部の学生がどのような考え方をしていて、何が得意で、何が苦手なのかを知ることができ、とても有意義だったと思います。これからもぜひ、3 学部合同のワークショップを続けてほしいと思います。


薬学部 豊守祥亮

参加した主な理由は、医学部生や看護医療学部生とはキャンパスが違い話す機会がなかったので、どのようなことを学んでいるのかを知りたかったからです。グループワークでは、学部による考え方の違いに驚きました。例えば、薬の過剰投与による医療過誤を考えたとき、薬学部生である私はまず薬剤師の疑義照会、薬薬連携などに不備があったのではないかと考えましたが、看護医療学部生は「医師の処方指示に看護師が疑問を感じられないだろうか。」と、皆に問いけました。その発想が私にはなく、看護医療学部で学んでいるからこそ、初めにそれを思い付くのだろうと感じました。さらに話し合いの中で、それぞれの専門分野の視点から意見が多く出て、議論がより深まりました。他学部生がどのような勉強をしているかも知ることができ、他職種の専門性を理解し、自己の専門性を再認識する上でも役立ったと感じています。

未来先導基金の取り組みにご賛同していただける方はこちらをご覧ください。

ご賛同いただける方はこちら

ページの先頭に戻る