2008年度公募プログラム

宇宙授業の継続とサンプルリターンミッション(JAXA)の実施

活動課題(テーマ)

全塾的な拡大宇宙授業の実施とJAXAによるサンプルリターンミッションの地上支援

担当

女子高等学校 教諭 小林 秀明

小林 秀明よく宇宙授業の名称から、宇宙関係者による講演や実験を連想されます。しかし本校の宇宙授業では,ベクトルの矢先は宇宙に向きつつも、ファッション・CM・ものづくり・詩の創作などテーマは身近なものです。

活動内容

本校では2004年度より定期的に講師を招いて『宇宙』をテーマとしたユニークな授業(以下「宇宙授業」)を行っている。2007年度は未来先導基金の援助を得て、新企画の「宇宙授業」を展開している。すでに実施された宇宙授業の一部は未来先導基金のHP、ニュースレター等でも紹介されている。
また、JAXAによる第2期『宇宙連詩』に参加し、教科を超えた新たな分野の『宇宙授業』も実施中である。さらに2008年度からは、JAXAによるサンプルリターンミッションの地上支援校に指定され生徒とともに活動する。

● 過去最多の受講者を迎えた「宇宙授業」の実施

従来からの本校の宇宙授業の骨子は以下の通りである。

(1)宇宙=理科という固定概念を外すこと。(2)生徒主体で行うこと。(3)女性が主役であること。

これらの骨子を踏襲しつつ、未来先導基金の趣旨を反映させるべく、第7回「宇宙授業」(2007年7月実施)では、宣伝・広報活動に力を入れて受講者の増員を図った。台風4号の豪雨の中、過去最多の200名を越える受講者(保護者および生徒)が本校に集った。第8回「宇宙授業」も、2007年11月30日に実施した。

● 今までとは異なる形式の「宇宙授業」の展開

今までの宇宙授業は、基本的には1回完結の講演形式の授業であったが、現在、実施中の宇宙授業では、JAXAが企画・公募している第2期『宇宙連詩』に継続参加を試みている。具体的には国語科の授業とのタイアップ、観望会を兼ねた詩の創作、詩人を招聘した宇宙授業を計画している。実際に第8回「宇宙授業」(2007年11月実施)では、作詞家を授業担当者として迎え、連詩に繋がる詩の授業を展開した。
このように2007年度の宇宙授業では、連詩について系統的な授業を織り交ぜ講演形式にとらわれない新形式を試みている。将来的には、幼稚舎~大学までの「リレー連詩」を実現したいとも考えている。なお、この企画により、本校は宇宙連詩について共同研究校でもある。

● JAXAによる『サンプルリターンミッション』への参加

2008年2月14日(JAミッション)、国際宇宙ステーションへの設置のため本邦モジュール(以下「きぼう」)の一部が打ち上げられる予定である。この計画では日本人宇宙飛行士(土井隆雄、星出彰彦:本塾理工学部出身、若田光一)らも順次搭乗予定であり、その第1回目にはアサガオの種子やミジンコの休眠卵を「きぼう」内に持ち込み、発芽率・ふ化率等が宇宙線によってどのような影響を受けるかを調べる実験を行うが、その地上実験校を本校が担当する(複数校で,実験の一部を分担)。このように実験を行った試料を持ち帰り,地上での試料と比較検討するのが『サンプルリターンミッション』である。将来的に、この実験は小中高の各学校にもアイデアを募集する予定で、本実験はそのためのプロジェクト版である。アサガオやミジンコは,小学生から一般人まで馴染みのある生物である。幼稚舎から大学生まで慶應義塾が本実験をリードすることで,宇宙教育分野においても慶應義塾がその一翼を担うことができる。

● 向井千秋氏との共同研究

本校の卒業生でもある向井千秋さんは、現在、「宇宙生物医学室(JAXA)」の設立準備中である。向井さんには講演者ではなく本校が行っている宇宙授業の講師として、現在進行・計画中の宇宙連詩やサンプルリターンミッションのみならず、医師としての立場から宇宙教育をバックアップしていただくつもりで交渉を行っている。

● デジタルコンテンツの製作

新たな試みとしては、新潮社が所有するデジタルアーカイブスを利用して宇宙連詩についての教材をJAXAと共同製作する。新潮社(メディア部 岡田雅之氏)には、おもに文学関連の貴重な映像や音源が保存されており、これらの資料は編集・加工すれば宇宙連詩や宇宙授業に活用可能なものである。将来的には宇宙連詩をまとめたものを書籍として出版するだけでなく、DVDとして教材化したいと考えている。
また、無償配布してきた短編の映像資料は、第10回目の宇宙授業を機会にまとめて「総集編」を製作する。これについては専門のプロダクションに依頼して製作するつもりである。

● ネットによる支援

HPからは資料を配信できりようにし、また、登録フォームから参加者の確認ができるようにする。個人情報の管理にも細心の注意を払い、インターネットの利点を生かして地域的な制約を排除し、あまねく宇宙教育の普及を目指す。

活動における効果

● 2007年度の成果

2007年度、未来先導基金からの援助を受け、今まで実現が困難であった地方からの講師を招聘することができた。その結果、授業の内容や形態も変化して保護者を含めて参加者は200名を越えるまでに至り、当初の目的を果たすことができた。

● 塾生・社会への効果と期待

「宇宙授業」は、理科(宇宙分野)にとらわれない授業を展開しているが、そのベクトルの矢先が最終的には宇宙に向かっていることを特徴としている。また、授業担当者からは仕事に対する考え、その人の人生観などを直接聞くことで教科書からは得られない体験(感動)がある。口コミで広がった情報により,聴講に来られた一般社会人の職種が多様化していることも挙げられる。これらの方々からフィードバックされた意見などは間接的ではあるが生徒にも確かに還元されている。

また、2008年度からは、諸学校の教員・児童・生徒への宣伝を行うと同時に、一般社会人を含めて教室に来なくても参加ができる授業(映像配信)を試行する。これにより今まで以上の宇宙教育の普及効果が得られるものと考える。

● JAXAの研究分野への効果と期待

慶應義塾は、平成19年10月18日付けで、システムエンジニアリング分野に関する協力協定をJAXAと締結した。このような専門分野での産学官協定も進みJAXAとの連携が深まる中、小・中・高の初等・中等教育の分野で、特に科学分野にとらわれない「宇宙授業」の果たす役割は、宇宙教育を青少年全体に波及させる意味でも効果は大きいと考える。
特に未来先導基金の趣旨はJAXA側にも深く理解され、その結果、宇宙連詩やサンプルリターンミッションといった、2008年度に向けた具体的な共同研究の依頼も増えている。今後も宇宙教育普及の拠点校として慶應義塾の存在をアピールし続けることで,JAXAという公的機関との様々な連携が期待できる。

参加者の声

公募プログラム

女子高等学校 會田有璃

宇宙授業の良いところは、「1回の感動で終わり」ではない所だと思います。講師の方の分野が幅広く、今までなら読み飛ばしていたかもしれない新聞記事を身近に、あるいは載っていないことまで知っているという嬉しい感覚を味わうことが出来ます。また、「まいど1 号」の青木さんがテレビに写った時などは、懐かしさで熱いものが込み上げてきました。授業後も何度となく楽しむことができるのが宇宙授業なのです。私は司会とアシスタントを務めましたが、企画の打ち合わせから参加し、高校生の視点も入れつつ進行できたのは新鮮で貴重な体験でした。特に星出彰彦さんとお会い出来たことは一生の宝物です。高校生の私にも優しく、輝いている大先輩を目の前に、その日は、宙にも浮いた様な気分でした。世間でも宇宙への関心が高まる中、宇宙授業が生徒の興味と夢を広げる伝統となりますように。


女子高等学校 徳丸晃子

私が宇宙授業に参加したきっかけは、以前から宇宙という未知なる世界に興味があった事です。今回のプラネタリウムクリエイターの大平貴之さんのご講演では、実際に会場全体に星が輝く素敵なプラネタリウムを上映していただきました。その演出と、映し出される星の美しさに、私は強く心を打たれました。また、自分が興味を持った物事に積極的に取り組み、その目標を達成する為に努力を続け、決して諦めないで前に進むことの大切さを学びました。高校生という大人と子供の狭間の青春時代において、大きな夢を持つ事に臆病になってしまう人も多いと思います。しかし、今回の宇宙授業を受けた事により、私も自分の持った夢には希望を持って取り組み、いつの日か達成したいと思いました。


女子高等学校 松田有穂

授業は、私の想像以上にとても素晴らしいもので、メガスターが上映された際の女子高生の反応もとてもよく、私もあまりの美しさに感動しました。また、幼い頃からの興味、好奇心をいつまでも持ち続け、次々と目標を達成していく大平さんの姿に感銘を受けた聴講者も多くいると思います。「間接的に宇宙と関係している方々の講演を通して、女子高生により宇宙を身近に感じさせたり、宇宙に対する新たな視点を提供する」、「宇宙授業を通して、講演者の方の考え方、生き様を知る」、そのような宇宙授業のコンセプトによくあっていて、プラネタリウムなどあまり行くことが無いであろう聴講生に、宇宙の綺麗さ、プラネタリウムの素晴らしさ、また一つのことに熱中していく一途な生き様を知るいい機会を作ってくださった素敵な講演でした。

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