2008年度公募プログラム

グローバル化時代の政治学総合教育

活動課題(テーマ)

法学研究科政治学専攻では、優れた大学院生,留学生を多数受け入れるとともに、国内外から著名な研究者・実務家を招いて、国際水準の教育・研究支援体制の確立に努めており、欧米の大学との交流に加えて、東アジアにおける国際的なネットワーク形成を重点的に進めている。
本研究科政治学専攻は、文部科学省の事業である「魅力ある大学院教育」イニシアティブ「グローバル化時代の政治学総合教育拠点形成」(平成18-19年度)を推進し、グローバル化時代の専門性と総合性を兼ね備えた政治学研究者を養成する体制を整備するとともに、産学官を通じた研究・教育機関の中核を担う人材の輩出に取り組んでいる(Keio Initiatives for Political Science:以下 KIPSと呼ぶ)。

KIPSの申請にあたっても未来先導基金による事業展開を明記しており、本プログラムでは、KIPSによる教育支援体制を発展的に深化させるため、中核事業である海外からの研究者・実務家による科目を拡充し、大学院カリキュラムの専門性,総合性の向上に努める。

担当

法学研究科委員長 国分 良成

国分 良成海外からの研究者・実務者による外国語での授業を拡充し、院生のみなさんに、国際水準の研究・教育に触れる機会を提供するとともに、大学院カリキュラムの専門性、総合性の向上に努めていきます。

主な活動メンバー

法学研究科教授 田中俊郎
法学研究科教授 増山幹高
法学研究科准教授 粕谷祐子
法学研究科准教授 細谷雄一

事務担当部門

法学研究科

実施状況

法学研究科政治学専攻では、優れた大学院生、留学生を多数受け入れるとともに、国内外から著名な研究者・実務家を招いて、国際水準の教育・研究支援体制の確立に努めており、欧米の大学との交流に加えて、東アジアにおける国際的なネットワーク形成を重点的に進めている。本研究科政治学専攻は、文部科学省の事業である「魅力ある大学院教育」イニシアティブ「グローバル化時代の政治学総合教育拠点形成」(平成18-19 年度)を推進し、グローバル化時代の専門性と総合性を兼ね備えた政治学研究者を養成する体制を整備するとともに、産学官を通じた研究・教育機関の中核を担う人材の輩出に取り組んでいる(Keio Initiatives for Political Science: 以下 KIPS と呼ぶ)。本プログラムでは、KIPS による教育支援体制を発展的に深化させるため、中核事業である海外からの研究者・実務家による科目を拡充し、大学院カリキュラムの専門性、総合性の向上に努めた。
具体的には、海外からの研究者・実務家による講義科目として、外国人招聘教授による外国語での授業を設置し、大学院生に国際水準の研究・教育に触れ、実践的な学術交流を習得する機会を提供した。設置科目は以下の通り:

◆ 科目名 Nonproliferation and International Politics(核不拡散と国際政治)2008 年秋学期
担当者 金京寿(Kim Kyoung-Soo)韓国・明芝大学・教授
◆ 科目名 Alternative Approaches to Japanese Foreign Policy(日本の外交政策に対する異なったアプローチ)2008 年秋学期
担当者 デイヴィッド・ウェルチ(David Welch)カナダ・トロント大学・教授
◆ 科目名 Strengthening the EU System of Governance(欧州政治統合論Ⅲ)2009 年春季休暇集中(履修上2009 年春学期)
担当者 フランク・デルマルティーノ(Frank Delmartino)ベルギー・ルーバンカトリック大学・名誉教授

これに加えて、KIPS で設置した基礎演習Ⅰ・Ⅱは学術的な専門性と総合性を培ううえでの初歩的なステップとして、政治学における研究動向を概観し、また多様な研究手法を習得することを目指すものであり、本プログラムにおいてもその継続・発展を図るため、関連プロジェクト科目も含めて、学外講師として、阿南友亮(東京成徳大学講師)、伊藤剛(明治大学教授)、宮城大蔵(政策研究大学院大学助教授)、川人貞史(東北大学教授)、清水唯一朗(SFC 講師)、熊谷得志(元衆議院事務局経済産業調査室長)、松元雅和(先導研講師)、岡崎哲郎(千葉商科大学教授)、小川有美(立教大学教授)の諸氏を招いた。

成果・目標達成度

◎ 金京寿教授によるNonproliferation and International Politics は、サブタイトルThe threat of weapons ofmass destruction and international security からも明らかなように、第一に核兵器・ミサイルを含む大量破壊兵器の危険性について学び、第二に国際的なパワー・ポリティクスのより良い理解のために20 世紀初頭からの国際的な軍縮努力の歴史を理解することを主要な目的としている。履修者の課題は、(1)ポリシー・ペーパーの提出、(2)最終日のプレゼンテーション、(3)授業への自発的参加であった。

◎ デイヴィッド・ウェルチ教授によるAlternative Approaches to Japanese Foreign Policy は、サブタイトルをTheories and Practice of Japanese Foreign and Security Policy とし、日本の外交政策や安全保障政策に関して国際政治理論の観点からアプローチすることを試みている。授業は、主要な国際政治理論に通暁するため、毎週、課題論文に関する小論文を作成し、それに基づく討論という形で進められ、学期後半には、履修者は日本が直面する外交・安全保障問題に国際政治理論的にアプローチした分析と発表を求められた。
フランク・デルマルティーノ教授によるStrengthening the EU System of Governance のサブタイトルはInternal and external challenges であり、EU 政治統合を理解するために、前半はEU の歴史的な発展から政策決定過程までを対象とし、欧州憲法条約、リスボン条約といった昨今注目される問題についても検討を加え、後半は内的な挑戦(EU の拡大等)から外的な挑戦(経済安全保障両分野の対外的側面)、さらに国際政治におけるEU の主体的なアクターとしての役割について包括的かつ専門的な議論を展開した。

今後の展望

法学研究科政治学専攻では、本プログラムを通じて、KIPS の中核事業を継続・発展させ、グローバル化時代に活躍する総合的知識と高度な専門性を兼ね備えた研究者を輩出することを目指してきた。具体的には、(1)国際的評価の確立(国際的に高い水準の大学院教育を提供する研究科としての評価を確立し、国内外からの優秀な学生を受け入れ、「全社会の先導者たる」人材を養成する)、(2)政治学総合教育のモデル化(本プログラムを政治学総合教育のモデル事業として、国内外の研究・教育機関に模範として提示する)、(3)優秀な研究者・教育者の確保(法学研究科の総合的な評価が向上することによって、本研究科が国内外の優秀な研究者・教育者にとって魅力的な研究・教育機関となり、本研究科のスタッフとして招聘あるいは雇用することが容易になる)が期待されるところである。政治学専攻の博士学位授与率(入学者に占める博士学位授与者数)は、2003~2008 年度において18.2%、36.4%、80.0%、91.7%、80.0%、77.8%と高い水準を維持するようになってきている。本プログラムによる外国人招聘教授の外国語授業などは、2008 年度に採択された法学研究科のGlobal COE(市民社会におけるガバナンスの教育研究拠点)や一橋大学とのEU 研究に関する戦略的大学連携事業(世界最高水準のEU高度教育共同大学院の設置を先端事業とする大学連携)によるプログラムに引き継がれ、大学院生に国際水準の研究・教育に触れ、実践的な学術交流を習得する機会を今後も継続的・発展的に提供していくものと期待される。

参加者の声

公募プログラム

法学研究科特別研究員 井岡博

『金京寿教授による授業について』
世界では、国連軍縮特別総会をはじめ非核地帯条約など兵器の不拡散に力を投じている。しかし核兵器と生物化学兵器など、さらに一般兵器も増強および拡散している。このような状況において大量破壊兵器の問題について基礎的な知識を身につけておくことは重要であろう。その意味において本講義は十分に課題を達成したと判断される。とくにパワーポイントを利用した解説は、英語や技術的な用語に不慣れな文系の学生にも視覚的にわかりやすく理解させることを可能にした。ただし、大量破壊兵器に関する講義では歴史や国際法、さらには科学技術などの広い側面が扱われなければならず、やや議論が拡散してしまった観があったことは否定できない。


法学研究科政治学専攻修士課程 市毛きよみ

『フランク・デルマルティーノ教授による授業について』
本授業は、ヨーロッパ人からみた欧州統合であり、EU の一視点を紹介する性質のものである。内容は歴史、機構、政策決定、憲法条約からリスボン条約、条約形成過程、さらに国際関係における位置づけ、拡大、アクター性と幅広く、かつアカデミックな意味でも実際の国際政治の意味でもアップデートされた専門的なものであり、非常に有意義な授業であった。この点に関して、EU を専門にする学生にとってはもとより、EU の初学者にとっては前半の機構的なところは専門用語が多く、また情報も新しいところからわかりにくかったところもあったかもしれないが、トピックとして広範にカバーしていたので、これからの学習の指針としての有用性は十分にあった。

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