2008年度公募プログラム

デジタルメディアをテーマとする日米共同バイリンガル・サマーキャンプ

活動課題(テーマ)

ニューヨーク学院における18年間のバイリンガル教育の実践と成果をもとに、日米の中高生(12歳から16歳)を対象として、バイリンガル・サマーキャンプを実施する。このキャンプでは、デジタルメディア・コンテンツ(DMC)を共通のテーマとして、日本語または英語による学習やディスカッションをおこなう。2週間にわたるキャンプでは、DMCにおける「デジタルキッズ」プロジェクトの成果を紹介しながら、映像制作、音づくり、などを体験学習する。参加者は、英語と日本語で意思疎通をはかりながら、共同作業をおこなう。日米の若い世代が、デジタルメディアにかかわる共通の課題(プロジェクト)に取り組み、相互に異文化理解能力やコミュニケーション能力を高めていくことを目標とする。

担当

ニューヨーク学院(高等部)学院長 迫村 純男

迫村 純男慶應NY学院の特徴は、バイリンガル・バイカルチュラル教育。アメリカの社会では、最近、日本のサブカルチャーに関心が高まっています。デジタルメディアをテーマとし、音や映像作り等のプロジェクトを通し、日米生徒達のコミュニケーションを深めていく、ユニークなキャンプ。塾生の皆さんもぜひ参加して下さい。

主な活動メンバー

ニューヨーク学院 芦沢真五
ニューヨーク学院 長沢 誠
ニューヨーク学院 Cody McCabe
DMC 機構 大賀 裕
Japan Society Robert Fish
DMC 機構准教授 杉浦一徳
DMC 機構助教、CANVAS 事務局長 石戸奈々子

事務担当部門

ニューヨーク学院事務室

実施状況

慶應義塾ニューヨーク学院による初の試みである『日米バイリンガル・サマーキャンプ』が、2008年7月26日~8月9日にかけて実施され大成功を収めました。このキャンプは「日米の中学生が共同で映像制作に取り組みながら、文化・言語交流をする」という主旨で行われ、米国、日本だけでなく、中国、欧州、アフリカなどに住む日本人や、米国各地に住む米国人など、国際的でユニークな背景を持つ58 人の中学生が集まりました。
映像制作のセッションは、ニューヨーク・マンハッタンにある、青少年向けの映像制作教育で30年以上の経験を持つDCTV のインストラクターにより丸7日間行われました。参加者たちは10個のグループに分かれて、ストーリーの作り方から撮影・編集技術などを学び、マンハッタンにも撮影に出かけ、自らインタビューや演技にも取り組みました。
また、今回のキャンプの目玉のひとつである、豪華なゲストスピーカーによるレクチャーも、各界の第一線で活躍する著名人に直接触れられる貴重な機会となりました。DCTV の創始者で著名な映像ジャーナリストでもあるジョン・アルパート氏、米国における日本のポップカルチャーブームに詳しいローランド・ケルツ氏、日本を代表する映画監督・黒澤清氏をはじめ、ポケモンの仕掛け人・久保雅一氏、米国で大人気のアニメ「Naruto」「Bleach」を手がける布川郁司氏、メディア・アーティストで慶應義塾大学教授の稲蔭正彦氏が、日米の中学生に対し、熱のこもったレクチャーを展開してくれました。この内3名のレクチャーは、慶應義塾デジタル・メディア・コンテンツ研究機構(DMC)、NTT サイバースペース研究所の協力を得て、最新の映像符号化方式に準拠したフルHDリアルタイムテレビ電話ソフトウェアを世界で初めて活用して、東京(慶應義塾三田キャンパス)とニューヨーク学院を結ぶテレビ・カンファレンス形式で行われ、最先端の映像伝送技術をも体験できました。安西塾長のご挨拶もこのシステムによりおこなわれました。
慶應義塾ニューヨーク学院ならではのバイリンガル・バイカルチュラル教育に基づく、数々のアクティビティも実施されました。日米の文化をテーマとする映画の鑑賞、手作り讃岐うどん、米国の夏には欠かせないバーベキューなどの文化交流活動に加え、デジタルサウンド制作・ダンス・アートなどのワークショップがおこなわれました。ヤンキース野球試合観戦、ブロードウェーのミュージカル観劇、 アメリカ自然史博物館見学、セントラルパーク散策、NBCスタジオ見学、国連見学など、ニューヨークを満喫できるフィールド・トリップも盛りだくさんでした。また、ESLとJSL(Japanese as aSecond Language)クラスで学んだ語学を、これらの活動や寮生活で実践的に活用していく中で、参加者たちの語学力も飛躍的に向上しました。

成果・目標達成度

キャンプ開始当初は、文化・生活習慣の違いやコミュニケーションの壁にぶつかり、うまく意見交換できないことに涙する参加者の姿も見られましたが、映像制作の過程で議論を重ね、数々の活動を通して交流する中で、次第に打ち解けてきました。最終日、それぞれが家路に着くときには、涙を流しながら抱き合ったり、写真を取り合ったり、連絡先を交換したりと、いつまでも別れを惜しむ姿がとても印象的でした。また、ニューヨーク学院に入学したいという米国人参加者が3 人も出て、急遽学院長と面談の場を持つほどでした。この充実した2 週間のキャンプを通して、ひとりひとりが「地球市民」として学び、たくましく成長してくれたように思います。
さらに、今回の成功要因のひとつは「KANYOS(Keio Academy of New York Online System)」の活用にあります。「KANYOS」とは参加者・保護者・教職員の情報交換や交流促進を目的としたオンライン・ツールで、キャンプ開始前から関係者のコミュニケーションを促進することに成功いたしました。特に、プログラム開催中は、毎日の様子を写真と文章で発信しましたが、保護者たちから「まるで自分たちも参加しているようで、画期的だ」と好評を博しました。
このユニークな内容のキャンプは、キャンプ開催期間中にも地元紙(Journal News)日系メディア(週刊ニューヨーク生活)でも取り上げられた他、キャンプ終了後、ローカルテレビ局「News 12」でも、米国人参加者のダニエル・スブリグリオ君と日本人参加者の宮坂美帆子さんがインタビューを受けました。

今後の展望

参加者・保護者からも非常に反応が良いこともあり、昨年同様、慶應義塾ニューヨーク学院における18 年間のバイリンガル教育の実践と成果をもとに、日米の中高生(13 歳から15 歳)を対象として、第2 回バイリンガル・サマープログラムを実施します(第2回は将来的に単位取得も目的とした教育活動の要素を前面に押し出すため「キャンプ」から「プログラム」に名称を変更します)。2 週間にわたるプログラムでは、映像制作、音づくりなどを体験学習します。同時に言語文化にかかわる学習、レクリエーション、フィールド・トリップを体験し、英語と日本語で意思疎通をはかりながら、グループで共同作業をおこいます。日米の若い世代が、デジタルメディアにかかわる共通の課題(プロジェクト)に取り組み、相互に異文化理解能力やコミュニケーション能力を高めていくことを目標とします。日米双方で各40 名の参加者を公募します。また、このプログラムの実施をとおして、本学院自体の広報、人事、受験生の確保、近隣地域との連携に関する機能も、今年はさらに充実させています。

参加者の声

公募プログラム

中等部 水野由実子

中等部に入学してすぐに、サマープログラムのことを知り、まだ英語にも自信がなかったので迷いましたが、参加することに決めました。外国でいろいろな経験をする機会をできるだけたくさん持ちたいと思っていたからです。初めは、時差ぼけと、説明の英語が全然分からなかったので、2 週間もたないのではないかと、かなり不安になりました。それでもだんだん同室の子とも話ができるようになり、ブロードウェイミュージカルを観にいったり、寮でアイスクリームパーティーをしたりして、楽しめるようになりました。このプログラムのメインは短編映画の制作でした。台本からカメラワークまで自分達でできるようになりました。ひとつの目的に皆で取り組むことで、コミュニケーションをとるきっかけができました。また、慶應だけでなく、他の学校や現地の生徒も参加していたので、たくさんの意見をきくことができました。このプログラムで、話すことに自信が持てたので、2009 年には、この一年で身につけた英語力を活かしてより積極的に参加したいと思います。


普通部 櫻井 修

「2008 日米バイリンガルサマーキャンプ」に参加できたことは、自分の人生に多分プラスになっているはずです。中学2 年の夏、このプログラムを知りました。ちょうど、夏の部活の練習に影響の少ない時期で、合宿直前に帰国できることが、なにより参加したい気持ちになったひとつのきっかけでした。中等部や湘南藤沢中高等部やニューヨーク学院など、機会があれば訪れたい学校でした。もう一つのきっかけは、このプログラムのメインが映像を作成することにありました。「音や映像のデジタルメディアを日米の生徒が共同して作っていく」という学院長の言葉に惹かれました。その頃、コマーシャルでセンスが良く興味を引く効果のあるものが、NIKE 、Mac、iPod などのアメリカ系のCMであったことです。特に音楽と映像に引かれるものがありました。そんな、人が興味をもってくれる映像を、「トップクリエーターによるレクチャー」を受けながら「ハンズオン形式の映像メディアワークショップ」で映像制作のプロたちによる実践的な指導を受けるチャンスのあるこのサマーキャンプで作ることができたらと思い参加を希望しました。毎日が楽しく、国連を訪れたり、最後のヤンキースタジアムで観戦したり、通信を使って塾長と対話ができたりと盛り沢山な企画の中で仕上げた作品は、当初の目的とはかなりかけ離れた物となりましたが、外国人2 名を含む5 人で仕上げた作品は今でもサマーキャンプの一番の思い出として残っています。今もその仲間。ニューヨーク校に行かなければ出会えなかった中等部の友人、これから受験をし、きっといつかは大学で一緒に学べる友人、多国籍、異文化の友人ができて今も交際が続いています。僕は普通部から一人の参加でした。世界各国から集まってきた同世代の仲間とともに過ごしたニューヨーク学院での2 週間は井の中の蛙だった僕の人生のすばらしい1 ページとなっています。


中等部 青島一繁

今回のサマーキャンプで一番驚いたことは最初ほとんどわからなかった英語がキャンプの終わる頃には聞き取れるようになっていたことです。話せる程にはなれませんでしたが、英語に対する苦手な気持ちは薄れた気がします。そして、サマーキャンプがきっかけで、英語をもうちょっとがんばろうという気になれました。また、キャンプで知り合った日本人メンバーとも仲良くすることができ、今では「えだマメ会」として時々会ったりしています。僕はその会の会長として企画の立案などをしているため、このキャンプで英語力だけでなく「人を先導していく力」を得ることができました。今回のサマーキャンプはとても身になるいいものでした。

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