2008年度公募プログラム

医学部におけるアジア地域医療ネットワーク拠点の形成
:国際レベルに対応できる若手先導者の育成と交流

活動課題(テーマ)

慶應義塾大学医学部は医学領域における拠点大学として、現在複数の海外大学と提携し幅広い国際学術交流活動を行っている。更に近い将来、単位互換性、dual degreeも考慮した国際医学教育研究アライアンスのアジア拠点として、義塾医学部がリーダーシップを取っていけるよう準備を進めているところである。
そこで義塾医学部ではアジア各国の医学研究教育機関との積極的な提携や交流を通じて、アジア地域の医学・医療ネットワーク拠点となることをまずはめざしていきたい。具体的には、アジア地域との学生相互交換留学の強化や優れた研究者・教員等による招聘講演の実施、これによる教育面での向上を重視する。

これらの活動により、義塾医学部がアジア地域の医学・医療活動においてリーダーシップを発揮できる若手研究者を育成し、地域に向けて医学・医療の未来を先導できる人材を輩出していきたい。そのことが、やがては欧米も含めた国際医学教育研究アライアンスへの加盟、そして国際社会への貢献につながるものと確信している。

担当

医学部教授 安井 正人

安井 正人グローバル化が進む中、アジア地域の役割も大変重要になってきました。アジアの将来を担う皆さんに大変期待しています。是非、このプログラムに参加してアジアの若者との交流を深めてください。

主な活動メンバー

医学部国際交流委員会委員長 安井正人
信濃町キャンパス事務室事務次長 廣田とし子
信濃町キャンパス学事課課長代理 信濃町国際センター兼務 秦 英作
信濃町キャンパス学事課係主任 信濃町国際センター兼務 廣瀬友彦
医学部 国際連携専門員 大曲美樹
信濃町研究支援センター係主任 信濃町国際センター兼務 杉山 雄

事務担当部門

信濃町キャンパス事務室

実施状況

1.中国の医科大学との交流プログラム

医学部生8 名が中国の医学大学機関5 ヶ所を4 日間かけ視察。現地の医学生・医療関係者との交流や病院見学を通じて、日本の医療体制との相違点や中医学の理解を深めた。

2.韓国 延世大学医学部との交流プログラム

双方の医学生がお互いの大学を訪問し、病院や大学内の施設見学、講義の受講、また両大学の医学生が英語によるプレゼンテーション・討論会を通じて交流の場を持つ。延世大学の医学生8 名が2 泊3日の予定で来日し、教室訪問、ディベート、観光などの交換プログラムを行った。

3.韓国 亜州大学医学部との学部間協定締結および交流プログラムの実施

5 月に学部間協定を締結後、7 月に2 名の学生が滞在し、講義の受講・臨床実習などに参加した。2009年度も、同様に2 名の受入れが決定している。

4.中国 北京大学医学部との教員交流

北京大学医学部から、副学長以下6 名の医学部訪問団を受け入れた。関係教員との会談および研究室や病棟の見学の後、講演会を行った。また医学部学生、慶應に在学中の中国からの留学生を交えて懇親会を開催した。

5.韓国 ソウル大学医学部6 年生との学生交流

ソウル大学医学部6 年生150 名が卒業旅行のプログラムとして医学部を訪問した。学生を中心とした交流会を開催。

6.日本語クラブ信濃町支部との連携強化

日本語クラブ信濃町支部との連携を深めた。主にアジアからの留学生が積極的に参加しており、イベントの引率を依頼したり、また日本語クラブのイベントを教室へ告知した。年末の懇親会にも呼んでいただき、三田本部のメンバーや留学生と交流を深める機会にも恵まれた。

成果・目標達成度

1.重要拠点との学術交流の充実

中国でもっとも優秀な医学部のひとつである北京大学医学部から学部長をお迎えし、学部長同士が、改めて交流継続の意思を確認することができた。2009 年度は全塾協定に基づく訪問研究員の受入れについて、医学部での実施が決定した。その後、医学部国際交流委員長の安井正人教授が現地を訪問し、友好な教員交流が継続している。

2.学生による交流プログラムの実施

  • 延世大学医学部とは、2004 年から始まった学生主体の交流会が年2回実施されているが、2008 年度も予定通り、相互訪問を実施した。
  • ソウル大学医学部とは、初めての交流ながら、学生同士のコミュニケーションおよび企画を学部がサポートし、卒業生150 名を迎えての大イベントを成功させることができた。

3.新規の交流開始

亜州大学医学部と学部間協定を締結し、さっそく、協定に基づく2 名の学部生を受け入れた。教員同士の交流が学部としての正式な交流に発展したもので、教員学生双方から研修内容への高い評価を受けた。2009 年度も同様の受入れが決定している。

4.日本語クラブとの連携

連携を密にし、短期研修の学生(アジアの学生が多い)をイベントに受け入れてもらった。名刺サイズの告知カードを共同で作成して教室で配布するなど、外国人研究員・学生に対するサポートの充実化を図った。

今後の展望

1.新規交流の受入れ:タイ(コンケン大学、チェンマイ大学2 回)

2008 年度後半より、医学部に対し、タイの大学および研究施設からの訪問依頼が相次いでいる。3 ヶ所らの訪問を受け入れたため、今後教員や学生交流の申し込みが増加する可能性が想定される。

2.宿舎の充実

開設から10年を経過した留学生用宿舎(大京町レジデンス)について、関係部署同席の下、全室の総点検を行った。家電製品、カーテンおよび食器の交換、新規清掃項目および清掃時間の再決定、寝具レンタル条件の改善が決定され、4 月以降順次実行される。半数近くを占めるアジアからの留学生にとって、よりよい住環境の提供が実現できる予定である。

3.慶應医学部の対外的評価の向上

個々の交流を医学部として組織的に管理整備していくことで、国際交流についてのアジア諸国の大学および研究組織の信頼を得、評価の向上を期待する。より優秀な人材との交流が促進され、慶應医学部自体のレベルを向上させ、アジアのリーダーとして医学・医療の発展を牽引したいと考える。

4.医学部生の意識の向上

学術交流をする機会が増えたことで、アジア諸国の医学部生が、彼らにとっても外国語である英語を自在に使って討論ができることを知り刺激を受けた。 今後、欧米だけでなくアジアにも目を向け向けさせ、グローバルにおけるアジアの中心として将来を担っていくための、真のグローバル感覚を養わせたい。

5.戦略的な協定締結

2008 年9 月に、医学部における協定締結のためのガイドラインを正式に策定した。教員同士の個々の交流を、医学部全体で統括する仕組みができたため、今後はより戦略的に協定を締結し、維持管理していくことが可能となった。

参加者の声

公募プログラム

医学部 川﨑健太

日韓医学生学術交流会は、韓国の延世大学医学部との交流を年2 回実施している医学部唯一の学生間双方向交流団体です。半年ごとに、学生有志が4~5 日間の日程で相互に訪問し、大学及び病院訪問、救命処置講習、ディスカッション、ボランティア活動やスポーツといったプログラムを実施しています。延世大学医学部は、韓国で最も優秀な医学部の一つであり、本プログラムを通じて、医療産業、生命、倫理について共に考え、将来のアジアにおける医療を担う国際的な視点を持った医療人になるべく切磋琢磨しています。2008 年度は、2 月に9 人の学生(2、3 年生)が訪韓し、7 月には3、4 年生8 人の学生を受け入れました。勉強の合間にプログラムを考え、資金の調達や報告書の作成を行うことは楽な作業ではありませんが、これらの作業から学ぶことも多く、積極的に取り組み、楽しく活発に活動できました。英語を共通言語とする本プログラムは、「使える」英語力の向上にも役立っています。


医学部 四倉正也

日中医学生交流協会は、中国への訪問を主な活動とする学生団体です。2008年度は、北京五輪関連と思われるテロの発生のため、大幅な変更を行ったものの、無事に実現することができました。北京大学医学部をはじめとする中国国内でも有数の医療機関はもちろん、多くの市民が通う市中病院や少数民族医学の現場も訪問します。医療形態は西洋医学が主流ではあるものの、中医学に代表される伝統医学や民族医療が色濃く受け継がれている面もあり、医療のルーツや、医学の多様性を感じることができます。このような中国の医療事情に直に触れ、現地の医師や医学生と交流し、意見を交わすことは、日本や世界における医療の未来を考える良い機会になりました。参加学生たちは、自ら目標を設定し、訪中に備えて中国医療についての知識を蓄え、中国語を学び、企業や教員から寄付を募るなど、主体的に活動しています。

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