2008年度公募プログラム

見る、会う、語る アジアの友だちプログラム part2
:未来のグローバル・リーダーを育てるアジア生徒交流プログラム

活動課題(テーマ)

2006年以来、義塾のICT環境を利用し、リアルタイムでアジア(フィリピン・タイ)の大学の中等教育段階の学校と塾内一貫校をWebで結び、TV授業を開催して来た。2008年3月には、TV授業の交流相手校であるタイ国、プリンセス・チュラボーン・カレッジ(ナコンシマラート)を訪問し、塾生と交流校学生が貴重な体験を現地にて共有することができた。本交流では、わが国とアジアの国々との過去の歴史と地理的空間を越え、世界的な視点に立つ未来のグローバル・リーダーを育成する青年を育成することにある。

本年度は、PCCが、10月に相手校の来日が予定され、さらに複数のアジア地域の学校を結ぶTV授業の継続実施が必要と考える。新たに熱帯林の減少問題や農村開発など環境教育等をテーマにして、インドネシア、マレーシアの中等学校との交流を探りたい。義塾内でも他の一貫教育校への波及を視野に置き、さらに一層の普及を目指す。

担当

普通部教諭 太田 弘

太田 弘二十一世紀、アジアと日本との関係はもっと緊密なるでしょう。若い世代同士、お互いの国の過去を学び、今と未来を見つめます。生徒同士、音楽・ファッションなど身近な話題から交流を始めますが、時間の経過と共に、徐々に地球的な視点に立った環境の問題や地域の開発の問題まで話題に発展します。

主な活動メンバー

普通部教諭 太田 弘
普通部教諭 林 和慶
王立プリンセスチュラボーンカレッジ副校長 ナディー サンチ
中等部教諭 山崎祥雄
日泰工業大学教員、現地協力者、在タイ国バンコク 水谷光一
総合政策学部1 年生 茂木隆弘
高等学校1 年生 安達琢磨

事務担当部門

普通部 事務室

実施状況

本プロジェクトは2006 年度から実験的に実施されてきたプロジェクトで、当初、インターネットを用いたテレビ会議による学校間授業交流から始まった。2007 年度に義塾の「創立150 年記念未来先導基金」の補助を受け、相手国を訪問するというテレビ授業・会議に加えて、実際に「見る、会う、語る」機会を初めて持つことができた。2008 年度は、2007 年度の実施評価に基づき、タイ国、王立プリンセス・チュラボーン・カレッジ(ナコン・シマラート市、以下PCC と表記)との交流事業をさらに発展させることができ、3月には相手校のPCC の教員、学生11 名を日本に招き、総合交流を実施することができた。また、義塾側も2度目の学生、教員によるタイ訪問を実施することができた。
当初、相手国の訪日を10 月に予定していたが、初の来日の為、タイ側でのタイ国文部省への説明、日本への入国ビザ等の準備等で調整が間に合わず、延期となった。また、義塾側の第二回目の12 月のタイ国訪問計画も11 月に起きたタイ国内での首相官邸前の封鎖、バンコク国際空港の占拠事件等により実施を断念、再度、3月の実施を目ざした。その結果、2009 年3月16 日〜20 日にタイ国PCC の教員・学生を、20 日〜25 日まで、義塾の教員・学生が相互に訪問することが実現した。これは、国際交流の本来の姿である「相互」での訪問交流となり、お互いの国で日々の生活視点から国と文化、現代的課題を共有することができたと言えよう。以下に本年度の活動記録を項目別に整理した。

2008 年6 月7 日 タイ国PCC 校とのテレ会議の実施。
テーマは「地球環境の変化と地球温暖化」
同 9 月 日本側プロジェクト担当教員によるタイ国訪問(太田)
同 9 月~12 月 テレビ会議を用いてPCC との授業及び、訪問日程等の打ち合わせ
同 10 月 PCC校の訪日を延期、12 月の義塾側のタイ訪問への参加者募集開始
(12 名参加希望)
同 11 月 タイ国内での紛争激化(首相府前占拠、国際空港占拠事件発生)
同 12 月 12月の義塾側の第二回タイ訪問の延期を決定
同 12 月 日本側プロジェクト教員によるタイ内政状況の調査訪問(太田、林)
2009 年1 月~2 月 テレビ会議を用いたPCC との交流プランの再協議
同 1 月 タイ国PCC の訪日プランの決定 国内受け入れプランの作成
同 2 月 在タイ国日本大使館へのPCC 教員・学生のビザ申請等、必要書類の作成
同 3 月 在タイ国日本大使館のPCC 訪問ビザが発給される
同 3 月16~20 日 タイ国PCC 学生来日(11 名の来日)
同 3 月20~25 日 義塾側のタイ訪問(6 名参加)

成果・目標達成度

本プロジェクトの2年目は、タイ国の政情に翻弄される1年であったと思う。タイの国内では、日本で報道されるとは異なり、平静ということであったが、この数年の軍事クーデターによる首相亡命から始まる一連のタイ国内での政局の混乱が、学生の訪問を伴う本プロジェクトの実施において多くの障害になった。しかし、実際にタイ国内のプロジュエクト関係者らとTV 会議システムで緊密に連絡- 59 -
を取り合うことにより、混乱の間隙を突いていくつかのプロジェクトが無事実施できたことは高く評価できる点ではないだろうか? 一連のTV 会議を経て、学生も教員も相互に意見を調整し、安全を確認し訪問が実現した。相手側の生活、学校生活などを日常の視点で垣間見るのは貴重な体験となった。いくつかの困難を乗り越え、安全を確保しつつ国境を越え、海を渡りかの地を実際に訪れることの困難さを乗り越えられた体験の意義は大きい。
日本国内のいくつかの学校で、こうしたインターネットによるテレビ会議システムを用い、地球規模の学習が実験的に実施されている。しかし、主なる相手国は欧米かオセアニアの先進国で、途上国であるアジア、アフリカ地域との交流は極めて少ない。さらに実際に相手国まで訪問し、日常の生活の中で相手側の国を理解する事例は皆無と言ってよいだろう。
現在、タイ国内には1,000 社を越える日系企業が活動している。我が国の企業、特に電気、自動車などを中心に食品、生活必需品に至るまで多くの日本製品がタイ人の生活の隅々まで浸透している現実がある。現地には日系企業の工場も建設され、日本との関係を否が応でも知る事になる。現地にも日本人学校があり、多くの小中学生が日本の教育システムの中で学んでいる。しかし、「どれほどの生徒が現地の同世代の現地生徒の生活に直接触れる出会いを持っているか?」と現地の教育関係者に問うと、ほとんど皆無という。これでは、折角の海外での生活体験は生かされず現地理解の貴重なチャンスを逸していることになる。本プロジェクトは、こうした観点に立ち、今後、将来においても、最も関係の深い繋がりを持つ地域、アジアの同じ世代の青年同士が「顔の見える、言葉の交わせられる」意味ある交流を実施できたことにあると言える。
特にタイ側の関心は極めて高く、今回のプロジェクトを通じての日本製の商品の裏側にいる日本人の真の姿を義塾の友だちの姿から垣間見たことと思う。日本の諸君は、忘れていた時間、人間そのものの魅力に改めて気が付いたのではないかと思う。

今後の展望

本プロジェクトの実施する価値は非常に高い。しかし、実際の訪問を伴う場合の困難は多い。相手国においてはビザの問題。義塾側の問題点は、特に保護者への途上国に対する漠然とした「不安」と「疑念」であろう。特に紛争や国内の混乱が起こるとその不安度は予想以上に高まる。多くの観光客が訪れるタイは魅力的な国であると評価されるが、本プロジェクトで目ざすものは偽らざる生活する人間の姿を見る事にある。同じ人間として日常の生活の目線から相互の国のすべてを見、関心を持ち続けることが望まれる。今回の様な不安定要素の多い中でのこちらからの訪問は、多くの問題点があったが成果も大きかった。以下、箇条書きに本プロジェクトの今後の方向性、発展性を整理してみた。

  1. インターネットのテレビ会議から相互訪問へ、一連の交流活動を無事実施することができた。
  2. TV 会議等の技術的な面はクリアーできたが、実際の訪問には「安心」という大きな障害が有った。
  3. 相互訪問に至るまでの手続き、特に相手側はビザの申請、日本側は保護者への政情の安定の説明等に苦慮した。
  4. タイ側、日本側の生徒たち(教員も)の国境を越えた相手国と人々の理解が進み、大きな成果を得た。
  5. 今後ともタイの政情不安は続くものと思われる。本プロジェクトの継続には、さらにタイ国内の情報収集が必要である。
  6. 本プロジェクトの先行事例は、今後のアジア地域での学校間の国際交流に役立つ貴重な事例となると思われる。

参加者の声

公募プログラム

高等学校 河野維一郎

今回のプログラムには、前年の3 月にタイのナコン・シータマラートに行ったことに引き続き、参加させていただきました。残念ながら、タイに行くことは、できなかったものの、PCC(プリンセス・チュラボーンカレッジ)の日本交流訪問に関しては手伝うことができました。前年のタイの訪問では初めての海外交流であったためか、緊張してしまい、なかなか生徒とうまく話せませんでした。しかしながら、今回は日本であったこと、2度目の交流であったことなどから、自分でも英語を積極的に使い、いろいろ話せるようになったと思います。PCCの教頭先生にも「君は去年と違い、よく話すようになったね」と褒めていただくことができました。また、同じアジアの人同士での文化の違いなどにも、触れることができ、とても有意義な交流となりました。


高等学校 安達琢磨

自分にとってこのプログラムへの参加は2度目であった。今回は昨年と違いまずタイから現地の生徒たちが来ていた。彼らにとって日本はあこがれの土地で、来るのに選抜試験があったという。それを聞いてとても驚いた。また彼らは自分たちのように好きなときに海外に遊びに行くことができないのだと知り、とても自分たちが恵まれているのだなと思った。どんな細かい日本での出来事に対しても彼らの目は非常に輝き、とも楽しそうであった。そんな姿をみてもっといろいろなことに関心をもって目を輝かせて取り組みたいと強く思った。そして今後ももっとタイの人たちにとって日本が身近になり、さらに彼らと自分たちがもっと深くお互いをわかりあえたらよいなと思った。

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