2009年度公募プログラム

中学生対象夏季英語研修プログラム

担当

外国語教育研究センター副所長 跡部 智

跡部 智「夏休みも試合や合宿で忙しい」「ホームスティはまだ早い」という海外研修未経験の人にオススメします。塾内交流に加え、非日本語母語話者との異文化交流ができる学習コミュニティを創出し、集中的に英語を使う研修にしたいと思います。

活動内容

目的、背景

タスク中心の授業や体験的活動の中で集中的な英語使用の機会を提供し、英語学習に対する動機付けの向上を図るとともに、塾生間および教員間の交流を促進し、もって異文化交流の基盤となる自律的学習者の育成を目的とする。

内容、成果

ブリティッシュヒルズは、英国様式の建物に英語ネイティブ・スピーカーのスタッフが常駐し、家庭や学校とは違う非日常的な雰囲気の演出がなされ、英語を使わざるをえない環境を提供してくれる。
建物は、実際に英国の建築物を分解して輸入し、再構築したもので、英国の雰囲気をよく再現しており、韓国の国営英語学習施設English Villageを開設する際に担当者が視察に来たそうである。実際、年間約400校が利用しており、教室での授業ではできない活動を短期集中的に実施するのに適している。この施設のこうした特徴を見て、擬似的海外研修の場であるといった表層的な捉え方をされることが多いのは残念なことだが、海外研修はインプットの量はたやすく増やすことができるが、発話しなくても済むことが多く、プログラムによっては、言語形式の学習も言語使用も少なく、観光旅行の側面が大きいものもある。

そこで海外研修では得られない、国内での短期集中型の外国語研修の独自性(uniqueness)を打ち出そうと以下の点に焦点をあてた。
・参加者のレベルにあったレッスンを塾内のネイティブ教員と日本人教員が共同で開発する。
・スコーン作りをするクッキング、テーブルマナーなど現実的な活動の中での言語使用を体験する。
具体的には、3日間で90分、9コマ分の授業を実施し、英語が通じた喜び(成功体験)と思ったことが十分伝えられないもどかしさ(失敗体験)の双方を経験し、学習への動機付けを高めてもらうことにした。1年目は、日本語を使ってしまう人が少なくなかったので、2年目は、ネームタグにシールを貼っておき、日本語を話すとシールを剥がしていき、チームごとにシールの数で競争するゲームを導入し、夕食後最後のレッスン以降翌日の朝食までの時間については、パブリックスペース以外は日本語の使用を認め、メリハリを付けることにした。これで日本語の使用はかなり減らせた。

FFIとCLT
言語のインプットでは、「意味理解」と「言語形式」の習得の2つの目的があるが、カナダでのイマージョンプログラムでの調査研究によると、理解できるインプットを増やすことで、「言語形式」よりも「内容・意味」に焦点をあてたインプットによって、聞くことや読むことの技能はかなりのレベルまで高まることが分かった。一方で、話す力や書く力といった産出的な力は、必ずしも聞く力や読む力に伴って向上するものではないと指摘されている。第二言語習得論の研究者の間で、言語活動を中心とした指導(Communicative Language Teaching)の延長線上に、言語形式に注目した指導(Form-focused Instruction)が注目されてきた最大の理由はそこにある。言葉の伝達において、意味理解ができ、目的を達してしまうと、その段階で「言語形式」への注目度は低下し、記憶に残らず、言語の習得に寄与しなくなるという。母語で物語を聞いたとき、内容は記憶していても、表現された言い回しや語彙が記憶に残らないという経験はないだろうか。ある人ならこのことは理解しやすいだろう。
そうであるが故に、言語形式の明示的な学習と言語使用を組み合わせることは重要であり、イマージョンによる動機付け向上を主眼に置いた海外研修では、十分なフォローは期待できない。

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