2011年度公募プログラム

高校生を対象とした体験的脳科学実習

活動代表者

文学部教授 渡辺 茂

渡辺 茂最近の脳科学の発展により、多くの人が心を脳に結びつけて考えるようになっています。一方、脳科学に過大な期待を持たせるトンデモ脳科学本も見られます。本プログラムは脳研究の実際を体験し、科学的な判断力を身につけることを目的としたものです。

 

活動内容

対象:慶應義塾の各高等学校に依頼のうえ参加者を募り,募集してきた高校生(30名程度。保護者の許可を要件とした)を対象とした。最終的な参加人数は23名であった。
日時:平成23年7月25日(月)〜同7月29日(金)。
実習場所および使用した機材:慶應義塾大学三田キャンパスおよび東宝ビル(CARLS),fMRI施設。実習機材はCARLSが保有する既存の機材を用いた(脳波計(EEG),近赤外分光計(NIRS),磁気共鳴画像装置(MRI)等)。
活動内容:高校生は,脳科学研究のわかりやすい講義を受講し,簡単な脳機能測定実習を行った。講義は文学部もしくはCARLSの教員が行い,その他,学外から脳科学に関する先端的研究を行っている研究者を招き,高校生に第一線で活躍する研究者の話を聞いてもらった。これらを通して,脳科学の基本的理解を促すだけでなく,研究者の実像を肌で感じてもらい,最終的には高校生自身が脳について疑問に感じたことから仮説を立てそれを実証するような「科学的に考え,確かめる力」を育む目的があった。講義内容は,脳の構造と機能に関する基礎知識と脳機能測定法に関するものが中心であった。塾内・CARLSの規定した安全倫理に準拠し,脳機能測定法によっては、教員による機器操作のもと,研究の基本的なプロセスと脳機能測定実習から成果発表までの一連の実習活動を体系的かつ体験的に学習した。また,参加した高校生は,EEG,NIRS,fMRIのいずれかの計測技法を枠組みとした研究グループに分かれ,高校生自身のアイデアをもとに研究の具体化を行っていった。
成果:参加した高校生にとって,脳科学とは,テレビや雑誌等で得た知識を基にした浅い理解でしかなかったが,講義や実習を通して通常であれば学校教育の中では体験不可能な先端的研究手法を実践的に体験することにより,脳科学に対する正しい理解を促し,研究の楽しさと難しさを実感することができた。また,本プログラムに参加した教員や若手研究者の一般市民への教育力や説明力を高めることにもつながった。また,このようなプログラムは,一貫校という大学と高校との連携が取りやすいことのメリットから生まれたものであり,参加した高校生が大学に進学する上での学部選択の参考になり得たのではないかと期待できる。

参加者の声

公募プログラム

慶應女子高等学校 2年生

自分が選択した脳機能計測法の実習で,より深く測定法を学べたのがとても楽しかった。短い時間で実験の結果を考察し,パワーポイントにまとめ,練習し,発表するのがとても大変だった。様々な講義を受けてみて,発達障害とアルツハイマー症候群についての研究を行ってみたいと思った。


慶應義塾高等学校 2年生

普段は目にすることもないような機械を見ることができ,実際に体験できたことが楽しかった。脳の仕組みを少し理解するのにもものすごく難しかったような気がしました。正直,一番科学らしくない学問だと思いました。少しの(頭の)動きなどで結果が大幅にずれてしまうところにそう思いました。人間の行動で,何気なくやっている仕草から人間の心理を読み取ることをしたいと思いました。

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