2018年度公募プログラム

[教養研究センター]

過去から未来を紡ぐ「日吉学」-建物・植生・地形からみたキャンパスの景観史-

活動代表者

教養研究センター所長 小菅隼人

小菅隼人「日吉学」は、自然や歴史遺産の宝庫、日吉キャンパスを素材に、講義と観察・体験と討論組み合わせた文理融合型の教育プログラムです。高大連携科目2019年開講を目指し、2018年度は建物・植生・地形から考えるキャンパスの景観史を学びます。

活動内容

 近世以来、下末吉台地一帯の典型的な農村だった日吉がどのようなきっかけで大学街として大きくその姿を変えていくことになったのか。日吉キャンパスは当初どのような理念のもとで設計され、その後戦争や高度経済成長などの激動の時代を経て、どのようにその姿かたちを変えていったのか。こうしたキャンパスの景観の変遷に関わるさまざまな疑問に対し、単に文字による記録を読み解くだけでなく、建物や植生、地形などの多角的な視点からのフィールドワーク、古写真の調査を通じて、歴史・自然・地理の3分野に跨る広い枠組みから考察する実験授業として、正規授業化にむけて180分授業を実施した。 
<活動内容>
 2018年9月22日は日吉学の趣旨説明(経済学部不破有理)の後、まず講義(文学部安藤広道)で景観史を通してキャンパスデザインを考える視点を提示した。その後グループごとにフィールドを行い、キャンパスで残したい場所や場面を写真に収め、その後グループ発表。9月29日は1932年に林塾長の「理想的学園を建設する」思いは第一校舎やキャンパスのデザインに読み取れるのか、講義(慶應義塾高校阿久澤武史)の後、実地見学し、最終課題をグループで話し合った。10月6日は、人はなぜ緑を見ると快適と感じるのかという問いの講義(経済学部福山欣司)から始まり、成長と季節変化を経る緑がキャンパスの景観へ及ぼす影響について、グループで考察・発表。日吉の航空写真20枚を時代順に並べ替え学生も教員も大興奮。アカデミック・スキルズミニ講義(法学部大出敦)を実施。10月13日は地形的特徴から日吉の立地を選んだ理由を考える導入講義(普通部太田弘)の後、地図から社会事象を読み解く第一人者今尾恵介氏の基調講演と質疑。鉄道の交通網の発達過程と田園都市構想を学び、大学誘致の理由をグループで推測、将来の慶應義塾の仮想Hubの立地を考え、グループ発表。10月20日はグループで発表のテーマと分担について、アカデミック・スキルズ修了生と教員のサポートの下、発表に向けて準備。10月27日はグループ発表のリハーサルと本番。教員や仲間から集中砲火を浴びつつ、無事発表終了した。いずれの発表も異なるキャンパスと学部、一貫教育校生が学べる「交流の場」や多様な学生や教員が出会える「広場の拡充」を望む結論となったことが印象的であった。2019年1月12日には個人のプレゼンテーションを行い、レポートと発表の優秀者を表彰した。実験授業で得られた知見を踏まえて2019年度設置科目としてのシラバスを作成した。また定期的に開催した研究会を通して、教材検討およびアクティブ・ラーニングの教授法・評価法を検討することができた。
<成果>
 大きな収穫は新日吉キャンパスマップの作製、そして教員・学生にとって新しい学びの場が誕生したこと。教員同士は教育手法を学び合い、学生共々日吉について嬉々として情報を交換し、一貫教育校の生徒と大学4年生が共同発表をまとめるなど、新鮮な教育の組み合わせによる効果が次々と生まれた。

参加者の声

公募プログラム

高等学校2年

2年連続で受講しましたが、日吉学をひと言で表現すると「贅沢な授業」という言葉がピッタリだと思います。先生方がそれぞれの専門分野について教えて下さり、一つのテーマについて様々な視点から考えるという事を経験できるのは貴重な機会だと思いました。また、大学生の方々と同じグループでプレゼンをするので、高校生の僕にとっては普段の授業よりも高度なレベルで学習する事が出来、とても新鮮で刺激的でした。授業の雰囲気もとてもアットホームで、このような授業は他に経験したことがありません。日吉学を受講する事によって学びの楽しさを実感する事ができました。このような機会を与えてくださった先生方に感謝しています。ありがとうございました。


文学部4年

普段見ていた風景を起点に日吉の過去・未来を想像するのは刺激的で、日吉生活を1年しか経験しなかった私にとって、キャンパスを舞台に“日吉の先輩”たちと学び合い、考え、議論する機会として毎回興味深く取り組むことができました。

未来先導基金の取り組みにご賛同していただける方はこちらをご覧ください。

ご賛同いただける方はこちら

ページの先頭に戻る