2022年度公募プログラム

[法務研究科]

グローバル法務人材の育成

活動代表者

法務研究科委員長 北居功

慶應義塾大学大学院法務研究科は、その設立当初より国際化を標榜してきたが、未来先導基金の活用を通じて海外の大学や機関で経験と研鑽を積んだ法務研究科学生が、将来、国際分野で活躍することを大いに期待している。

活動内容

ラオス人民民主共和国を訪問し,日本および国際機関による法整備支援の最前線の活動に触れた。
まず,国際協力機構(JICA)のラオス法整備支援プロジェクト・オフィスにおける専門家の講義を受け,現在のプロジェクト内容,従来のプロジェクトとの関係,JICAによる法整備支援の特色について,ディスカッションした。その際には,専門家が現在抱えている課題についても共有することができた。
それを踏まえ,ラオス国立司法研修所(NIJ)において,ラオスにおける法曹養成制度について説明を受け,その現状について質疑・応答を経たうえで,実際に刑事裁判に関する授業を聴講し,その教材づくりや授業方法について,日本がどのように協力できるかについて考える機会を得た。
また,ラオス国立大学法政治学部では,ラオスの伝統的な法制度について講義を受け,2018年に制定された民法典にラオスの慣習法がどのように反映されているかについて,質疑・応答が行われた。ラオス国立大学法学部の学生も参加し,日本の参加者との間で,比較法の観点からディスカッションを行った。
ラオス人弁護士の法律事務所では,ラオスにおける弁護士の活動が次第に拡大し,その役割に対する社会的認知が少しずつ進んでいる様子を,女性や労働者の権利を保護する活動等を通じて,知ることができた。
国際NGOとしてのアジア財団(Asia Foundation)の事務所では,NGOとしての独自の活動内容,とりわけ,多様なドナーの活動のコーディネーターの役割を果たしていることについて説明を受け,それを可能にしている背景について,ディスカッションを行った。
さらに,ヴィエンチャン首都裁判所では,貸金返還請求訴訟に関する民事裁判を傍聴し,実際の事件における裁判官,検察官,弁護士の役割,その課題について,非常に貴重な情報を得ることができた。
最後に,国連開発計画(UNDP)ラオス事務所において,ラオスにおける活動,国連組織としての活動の特色と限界についても知ることができた。

 

参加者の声

公募プログラム

法務研究科2年

JICA のワーキンググループで扱っていた事柄は、自分が法科大学院で最初に勉強した、最重要の部分であったが、同時に、他の学問と異なり、一番難しさを感じた部分でもあった。しかしこのような事項が、事実を法律に従って厳密に分けて分析する近代的な法整備を実現するために必須であることが分かり、有益だった。裁判手続きにおいても、日本であれば、見学者に法律の知識があれば、実際の裁判手続きを順に追って理解する事ができるはずだが、ラオスで見学した裁判手続きではこのようにはなっておらず、この点でまだ法の支配の浸透に課題がある事が分かった。また、JICA やUNDP では、法曹だからこそできる活動と、法曹でなくともできる活動とがある事が話題に上がった。今までは法整備支援や開発法学の活動内容を漠然と捉えていたため、このお話を聞いて、将来法整備支援に関わるとすれば、法曹としての存在意義を発揮できる場を自分で発見していく必要性があるのではないかと考えさせられた事は、学生の視点からそれぞれの機関の活動をみるうえで有益だった。


法務研究科3年

法律学の学習及び法律事務の学習に関し、私は以下二つの観点から大変有益だと考えます。
まず一つ目は、日頃ロースクールで学習している内容の重要性に気づけた点です。私たちは日頃、もちろん「法学」という観点から基礎法学を学ぶこともありますが、司法試験や期末試験を見据えて基礎法学を学ぶことの方が多いです。そうするとどうしても実務とどう関係してくるのか分からなくなることが少なくありません。もっとも今回のエクスターンシップにおける、特に各種ミーティングで議論されている内容は日本法等をラオスに導入するか否か、導入するとしてもどのように導入するかといった議論でした。それは私たちがロースクールで日頃勉強している内容を基礎とした議論であり、日頃ロースクールで学習していることの重要性に気付ける機会となりました。また、裁判や企業法務といった典型的な実務とは異なった知識の活かし方を知る機会にもなり、日頃の勉強へのモチベーションにもなりました。
次に二つ目は、比較法の観点から日本の司法制度の理解に役立った点です。私たちは日頃裁判傍聴やロースクールの模擬裁判を通して日本の司法制度について学習しています。もっとも、それだけだと日本の司法制度の良い点と悪い点がわかりません。そこでラオスの司法制度と比べて、日本の司法制度の良い点と悪い点が浮き彫りになりました。まず良い点としては、弁護士代理の原則に現れているように、当事者には基本代理人が付くということです。金銭的に貧しい者に対しても法テラスという制度があることにより完全ではありませんが支援体制が整っています。これは裁判・司法が難解で負ければ損失が大きいというリスクに対して、比較的フェアな司法制度と評価できます。もっとも、悪い点としてはラオスのように「一つの事件」として処理しないがためにまだまだ訴訟不経済、訴訟が非効率という問題が残っているということです。訴訟不経済により個々の案件の紛争解決に時間がかかれば当事者に時間、金銭や精神的負担といった不利益が生じるので、今後の検討課題にすべきだと考えました。このように他国の司法制度を知ることで自国の司法制度の理解が深まり、有益でした。

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