2015年度 秋学期 未来先導チェアシップ講座

オタク文化のコンテンツ想像力と効果的な経済的効果の波及
(大和証券チェアシップ講座)

講義の趣旨

 本講座では,日本から創造されてきたポップカルチャーが見出してきた創造と消費のスパイラル(循環)に着目し,コンテンツが生み出す新たな創造(二次創作,三時創作・・・)がもたらす国内・国際的な経済的効果の波及について学び,ポップカルチャーとして,創造スパイラルを刺激する効率的手法について共有する。日本の経済的発展の中に潜在していた能力主義(社会ダーウィニズム)は,能力主義社会を一般大衆化し,学歴社会といったメリットの定義と標準という形での最適化がアイデンティティ拡散を生み出した。結果としてモラトリアムが形成され,その中で青年は,モラトリアム消費として創造的活動という形でのオタク社会に貢献することによって,社会貢献へのエミュレーションを促していく.これら「オタク」による創造的活動に潜在するコンテンツの新たな可能性について学び,やがて「文化」として国際的にも認められ,発展していく様を実際に「コンテンツ創造イベント」に参加する形でリアルに共有する。

 このようなコンテンツ創造スパイラルが定着しやすい環境が,結果としてジャパン・クール(クール・ジャパン)と称する一種の国際文化ブームを巻き起こし,日本国内においても政策索敵に国際競争力を持つ成長産業として期待されている状況を認識する。クリエーティビティとしての源泉として国家ブランドにも影響を与える物という観点から,外交・政治面でも着目され,具体的な諸活動の起爆剤として活用されるためには,国際的に発展しているこのようなコンテンツスパイラルを注視し,効率的な経済的効果を促進するコンテンツ戦略も積極的に学んでいく。特にアジア・東欧諸国からも次々と生み出される逆輸入型コンテンツのコラボレーションをふまえ,それらを超えるような創造的コンテンツの進化と共有方法について共に議論する。国際コンテンツ協生時代(Era of Global Contents Collaboration)のあり方について,ネットワークを活用し,国際的な透過的コラボレーションを最大限活用することによって,教室内といった限定された空間のみでは学び取ることのできない総合的かつアクティブな講座を実際に活動している現役の方々を招聘者として招きつつ,実現していく。国際的に発展しているコンテンツスパイラルを注視し,効率的な経済的効果を促進するコンテンツ戦略を共有するために,日本,アジア,欧米と国際的に行われている各種大規模イベントに実際に参加し,その経験を学生と共に共有できる形で講義を含め行っていく。また,本未来先導チェアシップ講座とそれに伴う国際的規模の講座として認知してもらう事を目的として「高等教育におけるオタク文化の関わり合い」をテーマとしたフォーラムセッションをシンガポール,米国を拠点に行っていく。

 「国際性」を意識した,英語・日本語ハイブリッド講義を前提とした大学院専門科目として本講義は設置されているが,慶應義塾のもつ広分野における展開能力への礎として本講義は学部生をも対象とし,経済学部,商学部,環境情報学部,総合政策学部を中心として,義塾内全学部への解放を期待する。また,より高領域での議論を期待すべく,コンテンツ領域・オタク文化にて活動している塾OBの参加も歓迎したい。それらを考慮した上で,本講義は,日吉キャンパス,協生館の藤原洋記念ホール,多目的教室を中心として,湘南藤沢キャンパス,三田キャンパス,慶應大阪シティキャンパスといった塾内拠点へのネットワーク双方向講義配信をはじめ,シンガポール国立大学,台湾成功大學,延世大学校,コロラド大学ボルダー校,コロンビア大学,スタンフォード大学等時差を考慮した国際的双方向ネットワーク講義も進めて行く。

コーディネーター

杉浦 一徳 (大学院メディアデザイン研究科 准教授)

招聘者ならびに講義担当者

1)
Dr. Sheng-Fen Nik Chien
Associate Professor of Architecture & Creative Industries Design
National Cheng Kung University(國立成功大學・台南・台湾(中華民國))
Ph.D.(Computational Design, May 1998, CARNEGIE-MELLON UNIVERSITY)
専門:
Computational Intelligence in Design
Game-Based Learning in Architectural Education
Human-Computer Interaction

2)
Dr. Shamoon, Deborah Michelle
ASSISTANT PROFESSOR, DEPARTMENT of JAPANESE STUDIES
National University of Singapore(国立シンガポール大学・シンガポール)
2005: PhD (Japanese Literature and Film) University of California, Berkeley
Passionate Friendship: The Aesthetics of Girls’ Culture in Japan. University of Hawaii Press, 2012.
専門:
日本文化論,日本サブカルチャー

3)
Dr. Gan Sheuo Hui
Department of Japanese Studies, Faculty of Arts and Social Sciences
National University of Singapore(国立シンガポール大学・シンガポール)
2008: PhD (Human and Environmental Studies) Kyoto University
"Auteur and Anime as Seen in the Naruto TV Series – An Intercultural
Dialogue between Film Studies and Anime Research.” In Manga's
Cultural Crossroads, edited by Jaqueline Berndt and Bettina
Kümmerling-Meibauer. London: Routledge, 2013.
専門:
日本文化論

4)
小栗徳丸
株式会社WCS 代表取締役 世界コスプレサミット運営事務局
ジャパンエリアコードTV株式会社 代表取締役

5)
水上恵太
CUTE Inc. 代表 日本SF大会 運営委員

6)
菖蒲尚宏
コスプレ統合ショップParfait代表取締役社長
コスプレイベントクリエーター
コスプレピクニック実行委員会代表

7)
安田かほる
コミックマーケット準備会 共同代表

8)
里見直紀
有限会社コミケット 企画・広報

9)
Alisa Freedman准教授
Associate Professor, Japanese Literature & Film
University of Oregon
欧米からみた日本文化を専門
主な著書:Introducing Japanese Popular Culture

10)
大森田 不可止氏
ゲームプログラマ
Namcoに勤めていた時代,任天堂「ファミコン」のリバースアセンブルを行い,
その情報を元に,NamcoのゲームGalagaをファミコンに移植,サードパーティ
ゲーム産業を切り開き,ドラゴンクエストシリーズなど数々のゲーム開発に携わった。
    
その他にも当該分野の第一人者を招聘する予定である。

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