2023年度 春学期 未来先導チェアシップ講座

東アジアにおける国際仲裁の実務-日中韓の国際仲裁機関の実務と規則(野村證券未来先導チェアシップ講座)

講義の趣旨

国際仲裁の振興が日本政府の2017年の骨太の方針(「経済財政運営と改革の基本方針2017(骨太の方針)」)に取り上げられて以来、実務家向けの多くのセミナーが開催され、また、大学教育も実践されてきたが、その多くはコモンローの実務に基づいたものである。
ところが、現在、国際紛争案件で著しく増加しているのは東アジアの日本、中国、韓国の3国間における事件である。これらの3か国は大陸法のバックグラウンドを有する点で共通しており、コモンローベースの仲裁実務とは異なる法実務を実践してきた。残念ながら、これらの紛争案件が急増する地域の国際仲裁実務を学習する機会は現在のところ、日本でも海外でも殆どないのではないかと思われる。
そこで、当該3か国を代表する国際仲裁機関である日本商事仲裁協会(Japan Commercial Arbitration Association, JCAA)、北京仲裁委員会(Beijing Arbitration Commission, BAC)及び大韓商事仲裁院(Korean Commercial Arbitration Board, KCAB)の協力を得て、これらの仲裁規則と実務を学ぶコースの提供を行うこととなった。上記仲裁機関の具体的な協力は、仲裁規則と具体的な実務情報の提供及びZoomでの講師の参加である。
新科目の受講生は、国際仲裁実務を既に実践している実務家のみならず、将来国際仲裁に携わろうとする法科大学院の学生をターゲットにしている。紛争案件が急増している日本、中国、韓国の国際仲裁実務を学習することは明日の仲裁実務に直結する知識と経験を得る貴重な機会となることは間違いないと思われる。
また、国際仲裁の実務は日々進化しているものであるが、大陸法という共通の基盤を持つ3か国を代表する仲裁機関がこのコースを通じてお互いの規則の類似性や異なる点を認識し、より実務に即した効率的、実践的な規則と実務を発展するプラットフォームになることも可能である。 
さらに、国際仲裁では、仲裁地と呼ばれる事件に適用する準拠法の連結点は一般に中立的な第3国であることが実務であるところ、類似の規則と実務を有するならば、上記3か国内で仲裁地を担っていくことがより簡便に容易になってくると思われ、将来の仲裁事件の増加につながる可能性にもなりえる。その意味で、本コースは学習する受講者のみならず、仲裁機関の実務にも影響を与えることができる可能性を秘めている。

本コースは基本的に英語で行われるが、日英の通訳サービスも提供される予定である。

コーディネーター

宮武雅子 (大学院法務研究科 教授)

招聘者ならびに講義担当者

氏名:
Dr. Harald Sippel (ハラルド・シッペル)、並びにJCAA, BAC 及びKCABから派遣される講師が予定されている。
所属:
Skrine, Malaysia 及びJCAA, BAC 及びKCAB
研究領域、略歴:
国際仲裁、国際ADR

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