2009年度公募プログラム

「声」・「身体」・「感性」を考える― 
高等教育における実践と新しい教育モデルの提示

担当

大学教養研究センター所長 横山 千晶

横山 千晶慶應義塾教養研究センターは過去2年間、『声を考える』プロジェクトを通して、からだと心と頭をつなげる教育的な試みを展開してまいりました。2009年度は今までの積み上げを生かして、教育の未来を先導するための具体的なカリキュラム案の発信を、実験授業と成果報告を通して行う予定です。ぜひとも実験授業をのぞきにいらして下さい。

活動内容

目的、背景

本活動は2007年度および2008年度の未来先導基金の公募に採択された「『声』を考える」プロジェクトを引き継いだものである。2009年度は、3年目を迎え、最終成果として新たな教育モデルを提示することを目標とした。具体的には(1)文学、(2)音楽、(3)ドラマの3つのプログラムを走らせて、モデル構築を行った。(1)文学では少人数クラスによる短期集中的な体験授業を通して、文学作品の歴史的な意義を精読によって理論的に把握すると同時に、それを創作・パフォーマンスを通じて身体化することによって、文学作品のアクチュアリティを個々の身体に刻み込み、固有の芸術的表現にまで高めることの可能性を探求した。(2)音楽では、音楽を通じて歴史・文化の中の人間の生を追体験する教育メソッドの開発を究極目的とし、芸術に秘められた人間の生を、文学・歴史・思想等、多角的視点から理論的に見つめ直すとともに、演奏家とのコラボレーションにより音として発せられる過程を体感するという実験授業を企図した。(3)ドラマでは英語ドラマを題材とし、言語教育を超えた体感型の授業を展開することで、自・他とのコミュニケーションをうながし、協働体験を経て、公演を行うことで、言葉と体、そして心をつなぎ合わせるカリキュラムモデルの探索に努めた。

内容、成果

今回の3つのプロジェクトのうち、ドラマ(外国語教育研究センター設置科目「英語ドラマ」として展開)以外のふたつはどちらも実験授業として実施された。(1)の文学は、8月10日から15日までの短期集中型の授業で、慶應義塾の講師以外に狂言、演劇、舞踊の専門家をお招きし、南アフリカ出身のノーベル賞作家J.M.クッツェーの『恥辱』と『動物のいのち』をテキストとして、<動物とは何か?>という根源的な問題を正面から取り扱った。通常の授業では困難な思考と身体のコラボレーションを実践する有意義な機会となった。(2)の音楽では演奏家による実演を交えた実験授業シリーズとして10月17日から12月7日までの計5日の土曜日を利用しておこなわれた。講師としては慶應義塾大学の講師陣以外にクァルテット・エクセルシオをお招きし、講義と実践の双方を織り交ぜながら、学生主体の議論を展開する方式をとった。実験授業の成果発表として、日吉行事企画委員会(HAPP)の補助を得て本年1月15日に、受講者の運営による「クァルテット・エクセルシオ特別コンサート」を協生館藤原洋記念ホールにおいて開催。多数の地域住民を含む二百七十余名の聴衆に大好評を博した。本企画は音楽業界のいわゆる「口コミ」でも評判となり、趣旨に賛同した若手現代作曲家や音響エンジニアの協力も得られた。(3)のドラマでは、夏休みの合宿も含め既存の週1回だけの授業に終わらない密な環境を作り出すことで、2009年12月18日の公演に臨んだ。この1年間の経験を通して言語教育に積極的に身体性を取り戻すカリキュラム作りを実現することができた。

参加者の声

公募プログラム

文学部1年

沢山の身体を動かす表現を学べてよかった。純粋に身体を動かすことの楽しさを学べてよかった。だから、その分、他者がどうとか文学の価値がどうとかはどうでもよくなってしまった。けれど、予め他者がコンセプトと言っていただいたので、意外と他者について考えることは多かった。


商学部2年

大学に入ってなかなか一生懸命やることもなかったのですが、この授業は大学に入って一番努力しました。ドラマを使うことで英語のリズムが自然にからだに入ってきたし、フレーズもからだで覚えることができました。またいい仲間に出会えたことがよかった。相手をいろんな意味で思いやることを学んだ気がします。チームワークの大事さがわかった。

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