2009年度公募プログラム

イスラーム圏における研究交流拠点の構築による多元的学術交流の実践

担当

総合政策学部教授 奥田 敦

奥田 敦2025年には、世界人口の3分の1を占め、キリスト教徒人口を抜くとされているイスラーム圏。いかにしたら彼らとともに「われわれ」といえるようになるのか。学術交流のあらたな可能性を拓いていきたいと考えています。

活動内容

目的、背景

イスラーム圏との共存・共生は、グローバル化時代におけるグローバル大の人類社会の持続的な発展にとって不可欠の要素である。本プログラムでは、SFCを中心にここ10年近くの継続によって確立されてきた複数の活動拠点を基礎としながら、その充実と展開を図り、さらには、新たな拠点構築とそのネットワーク化を通じて、学部生から教員レベルまでをも含むイスラーム圏との間の相互的で、多元的、かつ実践的な学術交流活動を行うことによって、今後の塾のイスラーム圏との学術研究交流活動の基盤を拡充するとともに、イスラーム圏に対する一切の偏見に囚われない、自由で独立したグローバル時代の未来を先導するに相応しい人材育成を目指す。それは、イスラーム圏に住む学生たちとの実践的な活動を通じて、お互いがともに変わることによって、文化や国籍、あるいは宗教の違いを尊重しつつも決してそれに囚われない「大きなわれわれ」になることを目指す試みである。

内容、成果

1.拠点事業
①アラブ人学生歓迎プログラム(ASP)の実施
 2009年11月2日から16日@SFC、シリア3名、イエメン、モロッコ、レバノン各1名の計6名を招聘。SFCでアラビヤ語を学び、現地研修やアラブ諸国訪問プログラムに参加し、イスラーム研究を指向する学部学生たちが中心となって、日頃の勉強・研究の成果を生かした形で双方向的で実践的かつ未来志向的な交流活動を行った。

②日本フェア(アレッポ大学)への参加:2009年9月3日、アレッポ大学日本センターで行われる、日本紹介行事である、第6回日本フェアに準備段階から7名の学生が参加。SFCでのアラブ・イスラーム研究に関する研究・活動の紹介も行った。

2.拠点展開事業
①アレッポ大学学術交流日本センターによるアレッポ大学日本研究大学院の設置支援
②セントジョセフ大学設立1周年記念行事への参加
3.拠点構築事業
①リビヤ拠点の構築
②イエメン拠点の構築
③ウズベキスタン拠点
④モロッコ拠点
⑤そのほかの拠点:インドネシア、セネガルについては、フィールドワークに基づく、大学院レベルでの研究に著しい進展を見た。
4.拠点間連携事業
①共同研究プロジェクトの推進 アラビヤ語教材作成プロジェクト、マルチメディアアラビヤ語辞書データベースの構築、クルアーンとITプロジェクトにおいて研究の進展を見た。
②日本語教育支援 日本語教員養成を目的とする、相互の人材交流のための研修プログラムをアレッポ大学日本センターから若手教員を招聘して実施した(2009年12月6日から2010年1月14日)。

参加者の声

公募プログラム

総合政策学部3年

私は2009年度ASPにおいて実行委員長を務め、研究会に所属する約40名の学生をまとめ、プログラム運営に尽力しました。より多くの方にASPについて知ってほしいという想いから、今年は特に外部アプローチに力を入れて、班ごとに様々な工夫をしてもらい、また広報活動にも積極的に取り組みました。私は実行委員長として、「自分一人ではなく、いかに周りの人々と協調し合うか、そしていかに組織の方向性や可能性を膨らませることができるのか」を学びました。
ASPの目的は、互いの文化や宗教を知るだけにとどまらず、それらを通していかに私たち自身が変われるかということにあります。委員長の任期の終わりがASPの終わりではありません。今回のASPによる自分自身の変化という経験を生かして、今後さらに多くの人の変化のために、私が少しでもその契機になれればと考えています。来年は在学中最後のASPとなります。来年に向かって、新たな気持ちでASPに関わることができればと思います。


政策・メディア研究科修士課程2年

2月半ばから1ヶ月半にわたりアレッポ滞在のチャンスをいただきました。その間SFCのアラビヤ語教材の開発に携わりつつ、現地の専門家とアラビヤ語文献の講読を行いました。また、3月23日にアレッポ大学日本センターで開催されたシンポジウムでは、「従来のコミュニケーション・モデルでは捉えきれないアラビヤ語会話の広がりをイスラームの知から照射する」という私の研究をアラビヤ語で発表する機会に恵まれました。そこでは、「あなたの研究したいことは私たちの会話のこういう部分なのね」と期待以上の理解を得られただけでなく、「次はこの本を読んでみたらどう?」とアドバイスまで頂くことができました。日本ではイスラームを前提とした議論は必ずしも容易いことではないだけに、アレッポの人々が所謂アカデミックな知をそれぞれの専門としつつも、捨て去ることなく共有している確固たる知の力強さを感じました。また、そうした知が彼らの日常に息づく様を見るにつけ、研究はそれを行う者自身がその人生において実践しなければならないと、自らを振り返る滞在にもなりました。

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