2022年度公募プログラム

[文学部]

台湾の大学生と共に学ぶ植民地教育史:戦前・戦後地歴教育の変遷

活動代表者

文学部准教授 前田廉孝

前田廉孝複雑化と緊密化が併進する東アジアで近隣諸国・地域と共生を図る際に旧植民地領有国の日本に求められる歴史認識を,日台の大学生,さらには一貫教育校の高校生も交えながら,共同で模索します。

活動内容

 本プログラムは塾生が訪台し,現地で台湾の大学生と交流することを活動の中心としている。しかし,周知の通りに,2020年より外務省は台湾を渡航禁止地域として指定し,義塾も塾生の海外渡航を禁止していた。それゆえに,2022年度に訪台は実現できなかった。但し,本プログラムの中核を担う文学部日本史学専攻前田廉孝ゼミでは2022年度において代替として以下2点の活動を進めた。
 第1は,2022年12月11日に台北大学とオンラインによる学術交流を実施した。具体的には,日本・旧植民地に現存する歴史的建造物の保存と利用実態について調査・研究し,その成果として2つの報告を用意した。第1報告”Preservation and use of building”は日本国内を対象に保存されている近代建築物と既に破壊されたそれを比較し,近代建築物の保存には(1)保存のために生じるコストを上回る経済的収益の発生,(2)周辺地域における保存へ向けたコンセンサスの形成と保存活動の拡大が必要であることを指摘した。第2報告”Destruction and preservation of colonial modern architecture within the Japanese Empire”は台湾・韓国を対象に,日本統治期に建設された近代建築物の保存状況を検討した。近代建築物の保存は政治体制の変遷に規定されていた。戦後における台湾・韓国の政治体制は独裁制もしくは軍事政権が民主化へ向かう経路を辿り,その間における政治構造の変化は建築物の保存動向を大きく左右した。以上の報告に台北大学の学生から複数の質問が示され,両校の学生間で活発な議論が展開された。
 第2は,2022年7月2日と2023年1月17日に講演会を開催した。第1回講演会では,全国通訳案内士・フランス語通訳として海外VIPの通訳案内に携わっておられる川瀬直美氏に「日本史がつなぐ世界:異文化コミュニケーションと日本史」との題目でご講演頂いた。第2回講演会では,ミラノ大学講師のフィリッポ・ドルネッティ氏に”Colonial Fushun, a “thriving industrial city”?: The development of a colonial company-town in Manchuria, 1906-1940”との題目でご講演頂いた。いずれのご講演も外国人の視点から日本史を捉え,視野をドメスティックな範囲に狭めてしまう傾向のある日本史研究を進める学生達にとって新鮮な内容であった。なお,ドルネッティ氏は出張の合間にボランティアとしてご登壇頂いた。
 以上の内容により2022年度の本プログラムは,コロナ禍における制約は大きかったが,その条件下で日本近代史をグローバルな視野から見渡す試みを進めることができたと言えよう。

参加者の声

公募プログラム

文学部3年生

全国通訳士になるために求められるスキル、またその働き方まで丁寧にお話いただきました。お話を聞く中で、異なるバックグラウンドを持つ方々と、母国語ではない言語で意思疎通をとる難しさを感じました。その上で、多様性が重要視されている現代においては、自分また自国のことをよく知り、相手を理解できるよう、歩み寄ることが最も大切だと考えました。


文学部3年生

満鉄における企業城下町である撫順の都市発展についてお話いただきました。満州国産の輸出石炭の大部分を担っていた撫順では、炭鉱業を中心に都市経済の発展が進み、また民間企業の発展に満鉄が大きな役割を果たしていたことを知りました。地域の都市化や発展には、地方都市との需要の関係や、近接する都市の存在など、多くの要因をもとに形作られていくのだと感じました。

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