2008年度公募プログラム
中学生対象夏季英語研修プログラム
:中学生対象塾内連携型夏季集中英語研修プログラムの開発
活動課題(テーマ)
中学生を対象とした塾内連携型の英語研修プログラムを開発し、集中的な言語使用経験の機会を提供することで言語学習への動機付けの向上を図るとともに、慶應義塾の塾生および教員間の交流を促進し、異文化交流の基盤を築くことを目的とする。
担当
外国語教育研究センター副所長 跡部 智
このプログラムでは、実際に英語を使って活動する中で、英語が「通じる(成功)体験」と「伝わらない(失敗)体験」を通して、英語学習への意識を高め、自律的な学習者となるための学習ストラテジーを身につけてほしいと考えています。
(1) プログラムの概略
- 日程
- 2008年9月1日~9月4日 (3泊4日)
- 場所
- ブリティッシュヒルズ 福島県岩瀬郡天栄村大字田良尾字芝草1-8
- 交通
- 貸し切りバス(往復)
- 参加生徒
- 普通部・中等部・湘南藤沢中・高に在籍する中学生 約30名
- 引率
- 専任教員等
- 募集の日程
- 参加者募集(6月中旬)、参加者決定(6月下旬)、保護者会(7月中旬)
(2) 参加する塾生のレベル・状況にあったレッスンを塾内のネイティブ教員と日本人教員が共同で開発し、参加者である塾生間、教員間、さらには教員と生徒の相互交流が可能となるよう、オーセンティックなコミュニケーション活動を実施する。
(3) 英語でスコーンの作り方を習うクッキングのクラス、夕食前のテーブルマナーの授業など、現実的な活動の中での言語使用を体験する。
(4) 教職志望の大学生アシスタントの参加を募り、学校実習の機会を提供することで「半学半教」を実践する。
(5) 異文化トレーニングの要素を入れた事前指導を開発する。
(6) 日本にあるインターナショナル・スクール(フランス人学校、ドイツ人学校等を含む)の同世代の生徒の参加者を募り、交流の可能性を模索する。
(7) 複数年の実施によりプログラムの効果について検証を行う。
立案に至る背景
(1) 塾内の中学校で行われている海外研修は、英国(中等部、普通部は1999年のみ)、オーストラリア(湘南藤沢中等部)があるが、決して安くない参加費(通常30~40万円)、治安の悪化による中止リスクとキャンセル料の発生(特に英国)、引率可能な生徒数の制約、相手校の受け入れ体制により隔年での実施(湘南藤沢中等部)等の課題があり、一部の生徒しか恩恵を受けることができないのが現状である。参加した生徒の帰国後の動機付けの高さなどは経験的に実証されているとはいえ、長期間の引率を引き受ける教員も限られ、解決しがたい問題も多く存在する。期待される効果はそのままに、現状を改善する、費用対効果において優れた新たなプログラムを提案したいと考えた。
(2) ブリティッシュヒルズは、英国様式の建物に英語ネイティブ・スピーカーのスタッフが常駐し、家庭や学校とは違う非日常的な雰囲気の演出がなされ、英語を使う動機付けを与える環境が整っている。施設は、実際に英国の建材を組み立てたものを分解して輸入し、再構築したもので、英国の雰囲気をよく再現している。韓国の英語村(English Village) という国営英語学習施設を開設する際には担当者が視察に訪れ参考にしたそうである。年間約400校が利用しており、教室での授業ではできない活動を短期集中的に実施するのに適している。
(3) 本プログラムでは、利用する施設が数百名規模の団体を多数受け入れており、短期集中の言語使用体験という、外国語を学習しはじめてから1年~2年程度経過した段階にある学習者に対して、次の段階へ移行するきっかけ(booster)を与える活動に適した施設で、初年度は30名の宿泊を確保できたので、立案することとした。
(1) 今回のプログラムにより、擬似的とはいえ英語を使わざるを得ない雰囲気のある施設とスタッフの中で、参加者は通常の授業では経験できない集中的な英語使用環境に身をおくことになる。そのような環境下で、英語が通じた喜び(成功体験)と思ったことが十分伝えられないもどかしさ(失敗体験)の双方を経験することができ、こうした体験により学習への意識を高めることが期待できる。
(2) 塾内中学校3校連携の最初のプログラムとして、高等学校レベルでの慶應義塾三田国際文化交流協会主催のプログラムの長所である「横のつながり」を活かした塾内交流の機会を創ることで、参加者間のオーセンティックなコミュニケーション活動の促進が期待される。
(3) 海外研修の旅費、準備(日本と現地)、危機管理・安全対策等のコストとリスクを考慮しつつ、国内であっても言語使用を促す環境の整った施設による、コスト有効度の高いプログラムとすることができる。
(4) 外国語教育研究の成果を活かし、塾内外へプログラム開発のモデルを提示する。