2008年度公募プログラム

中学生対象夏季英語研修プログラム
:中学生対象塾内連携型夏季集中英語研修プログラムの開発

活動課題(テーマ)

中学生を対象とした塾内連携型の英語研修プログラムを開発し、集中的な言語使用経験の機会を提供することで言語学習への動機付けの向上を図るとともに、慶應義塾の塾生および教員間の交流を促進し、異文化交流の基盤を築くことを目的とする。

担当

外国語教育研究センター副所長 跡部 智

跡部 智このプログラムでは、実際に英語を使って活動する中で、英語が「通じる(成功)体験」と「伝わらない(失敗)体験」を通して、英語学習への意識を高め、自律的な学習者となるための学習ストラテジーを身につけてほしいと考えています。

主な活動メンバー

外国語教育研究センター兼坦所員(湘南藤沢中・高等部教諭) 藤田真理子
外国語教育研究センター兼坦所員(普通部教諭) 大久保正章
外国語教育研究センター兼坦所員(中等部教諭) 江波戸 愼

協力者

湘南藤沢中高講師(招聘) パルマー、ティムTim Palmer
普通部講師(非常勤) グレコ、ローマンRoman Greco

事務担当部門

大学外国語教育研究センター日吉支部

実施状況

外国語教育研究センターでは、2008年9月1日から4日までの3泊4日で、福島県岩瀬郡天栄村にあるブリティッシュヒルズにおいて塾内中学生を対象に夏季英語研修を実施した。
募集数30名に対して34名の応募があり、普通部男子15名、中等部女子9名、湘南藤沢中等部女子8名の合計32名(男子15名 女子17名)が参加した。
引率は、センター所員である跡部智(普通部)、大久保正章(普通部)、藤田真理子(SFC中高)の一貫教育校教員3名にTimothy Palmer(SFC中高)、Roman Greco(普通部)のネイティブ教員2名を加えた5名があたった。
内容は、(1)学習マネジメントシステムMoodle(ムードル)を利用したオンラインの事前活動、(2)慶應のネイティブ教員と日本人教員が共同で開発した英語レッスン、(3)現地の施設を利用したクッキングなどの実技レッスンの3点を中心に組み立てた。
夏休み開始直後の7月22日に保護者・生徒対象の説明会を開催し、現地での生活に必要な基本表現をまとめたBefore Trip Exercise というワークシートを作成して配布した。また『ヨーロッパ言語共通参照枠Common European Framework of Reference for Languages (CEFR)』に基づいてイギリスで作られた『ヨーロッパ言語ポートフォリ』を配布し、今までの学習をCan Do Statements により自己評価し、合宿に持参する課題を出した。そしてMoodle 上に自己紹介フォーラムや日誌コーナーを開いて研修までの40日の間書いて交流する活動をおこなった。
現地での英語のレッスンでは、functional/situational な題材を中心に以下の活動を実施した。
1) Before trip exercise 2) Getting to know each other 3) Orienteering
4) Homestay English packs 5) Homestay plays 6) Mystery evening
英語レッスンの合間に、現地スタッフによる実技レッスンを入れ、座学と体を動かす活動のバランスを取り、最後の夕食前には、英語によるテーブルマナー講座を行った。
1). Calligraphy 2). Garden Golf 3). Cooking 4). Table Manner
最後に英語による感想発表をビデオ撮影する課題を出した。参加後は、Moodle を利用して感想文の提出をしてもらい、無記名のアンケートを実施した。
アンケート集計では、研修後の英語学習への「きっかけ」となったという回答が多数を占め、また、感想文からは、他校の生徒とも友達になれ別れるのがつらかったといった記述も見られ、情意面に働きかけ学習コミュニティーを生み出すことで動機付け向上をはかるという目的も達成できたと考えている。

成果・目標達成度

外国語教育研究センターは、2003年に語学視聴覚教育研究室を発展改組する形で発足したが、これまでに大学生対象の夏季セミナーを実施してきた実績がある。センターが、一貫教育を視野に入れた全塾的な外国語教育研究を推進・支援する組織となり、今回中学生を対象にした塾内連携型の夏季集中英語研修プログラムを開発することを提案した。
塾内の「横のつながり」を重視した研修プログラムとして、高校生には慶應義塾三田国際文化交流協会主催の海外研修があるが、中学生レベルでは同種のプログラムがこれまでなかったことも理由のひとつとしてあげられる。塾内で新しい友達を作るということもオーセンティックなコミュニケーション活動のひとつとし、生徒の感想文からも期待通りの結果が得られた。さらに、本務校の異なる教員同士が学校の垣根を越えて企画運営することは塾内の情報交換や交流の基盤をつくり、共同体意識を育てることにもなり教員側にも大変意義のあるものであった。
中学生の海外研修は、ある程度の英語力と異文化受容の準備(Readiness)ができた段階においては、費用に見合う成果が期待できるかもしれないが、英語を学習して1~2 年程度の中学生では、一人でホームスティは無理だと尻込みする生徒も少なくない。また言語文化の受容吸収の程度は、その費用労力と対比し十分なものとは言い難い。何より、夏休み中は部活動や旅行などで、海外研修に参加できない生徒は少なくない。そうした状況もあり3泊程度の短期集中英語研修のニーズは思いのほか高いということも分かった。
ブリティッシュヒルズは、高等学校と幼稚舎での利用実績があり、年間400校が利用する施設だが、国内では他に類を見ない優れた研修施設であり塾内施設では提供できない、英語を実際に使う環境が備わっている。その中で、タスクをもとにした集中的なコミュニケーション活動を行い、英語が通じた喜び(成功体験)と思ったことが十分伝えられないもどかしさ(失敗体験)の双方を経験させることができ、学習者相互の関わりを重視した活動を織り込み、同世代の仲間による学習コミュニティーを生み出すことができた。感想文やアンケート結果からも動機付けの向上や今後の学習への意識の高揚がはかれたと考えている。

今後の展望

2009年度のプログラムでは、オリジナル性と質の更なる向上をはかるよう次の点に努めたい。
(ア)【英語集中授業】塾内中学では、異文化理解や国際交流のための海外研修はあるが、英語の集中授業を目的にした唯一の宿泊行事。
(イ)【塾内協働型】塾内3中学の専任教員が参加し指導する協働型宿泊行事。高校生対象の海外研修(三田国際主催)は、引率教員は各校持ち回り分担なので協働しないが、このプログラムは、他校の教員と企画から運営まで協働している点で他に類をみない。
(ウ)【初級対象、運動部員でも参加しやすい】試合や合宿等の都合で海外研修には参加しにくい運動部員や、心理的にも、まだホームスティに参加する勇気(readiness)がない生徒にとって、3泊程度の研修なら参加したいという需要は多い。
(エ)【低コスト】費用の点では同地の他の研修(約10万円)に比べ優れている。
(オ)【タスク中心と複文化複言語】コミュニケーション量を最大化・最適化するタスクを中心にプログラムを企画。初級レベルでは、英語母語話者の英語に威圧されて自信を失うことが指摘されているので、英語を外国語として学習している同世代の生徒との学習活動により、複言語的学習コミュニティーを生み出す。
(カ)【教員志望の学生アシスタント参加】教育実習では体験できない校外学習の現場を体験してもらう「半学半教」の場を提供する。

参加者の声

公募プログラム

普通部1年

学校で黒板と教科書と鉛筆だけでは学べないことをたった4日間でたくさん自分のものにでき、とても勉強になるとともに自信にもなりました。


SFC 中等部2 年

I really remember my teacher who taught me how to make scones. He was very good at teaching, and also very funny.


中等部3年

最初は学校同士の間に壁があったけれど一日で解け合って、最後にはずっと昔から知っていたんじゃないかと思うほど打ち解けて、別れる時はもう会えないのが信じられなくて、渋谷のど真ん中で周りの目も気にせず泣いたほどです。

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